人口をもとに日本の経済問題を考える-日本の人口ボーナス時期はすでに1995年で終わり、とっくに人口オーナスに突入している。また日本の人口は2006年の12770万人をピークに、2050年には1億人を切る。この急激な人口減を目の前に、日本は21世紀の経済をどのように乗り切る?- (2011年10月記載)

 日本の人口は、明治を迎える約200年間3千万人前後で飽和していた。江戸期はコメを作る農業技術が発展・飽和した時期だったが、化石エネルギーを利用せず太陽エネルギーとリサイクルでやりくりしてきた鎖国時代であり、3000万人以上の人口を養うことが出来なかった。
 しかし明治期に入ると石炭エネルギーが利用されはじめ、化学肥料の生産や工業製品の生産と輸出も始まり、日本の人口が急増し始める。http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1150.html

 明治以降日本の人口は急速に膨張し、1967年に1億人の大台に達して2006年には1億2770万人のピークを迎えたが、2050年頃には再び1億人を割ると予測されている。 人口は国力の反映とされるが、人口1億人以上の日本の時代は高々100年に過ぎなかったと言うことだ。http://www8.cao.go.jp/shoushi/whitepaper/w2005/17WebHonpen/html/h1130030.html

 世界の歴史を見てみると、為替通貨が高くなって潰れた国はないし、人口が減って経済的に隆盛した国もない。現代日本の円高且つ人口減は歴史的には非常に興味深い現象と言える。人口が増加し人民元も切り上がりつつある中国。また人口は増加したが米ドル為替が安くなっているアメリカ。これらの国と日本の将来経済動向を比較すると、研究としては面白いかも知れない。

話はそれるが、
 各国には労働力人口(全人口における生産年齢人口の割合)が増え、うまくこの波をとらえれば経済が高度成する時期が一度はある。いわゆる人口ボーナス時期だ。例えば、日本の人口ボーナス時期は1960−1990年であり、この30年間に日本は高度経済成長したが、1995年には労働力人口が減少に転じ、そのあと労働者人口が14才以下65歳以上の非労働者人口の2倍を切る人口オーナスに突入した。 そのせいもあり、それ以降、日本は長期経済停滞期に入った。
 外国でいうと、中国や韓国は2015年、インドネシアなどの東南アジア諸国は2020年、ブラジルは2030年、インドは2040年頃に労働力人口が減少しはじめ、それから5-10年ほど遅れて幼年および老齢人口が国の経済的負担になるいわゆる人口オーナス時期に突入する。一方、米国は移民が増えているから人口オーナスには突入しない。
 中国や韓国はよほど巧みで強力な国家戦略をたてて財政政策を実施しなければ、2020年頃からは日本のように経済が長期停滞することを知っている。 しかも中国や韓国の経済高度成長の期間は日本ほど長くはなかったので、人口オーナスに備えた資本蓄積も十分とは言えない。中国や韓国の賢明な政治指導者は、目前に迫った自国の人口オーナスに際してどのように国民を養ってゆくのか、必死で国家経済戦略を考えていることだろう。


さて、話を戻すと、

 米国については、1995年と今とでは日米の物価水準に大きい開きが出来てしまっている。購買力による実質為替レートでは、円の価値が1995年と日米比較して1.5倍も強くなって来ているので、1995年と同じ日米の物価水準にしようとすれば、為替レートが1ドル63円になって初めて1995年の日米物価水準に戻る。すなわち、1ドル75円くらいではまだまだと言う計算になる。米国における製造業の衰退とドル紙幣の大量刷増しにより、米国経済は疲弊してしまったのだ。

 為替相場介入がやりにくい日本は、海外からまだまだ円は強く円を買う余地があるとされて、円高悪循環となっている。しかし、日本円が将来も本当に強いかとなると、決してそうは言い切れない。今は、国際通貨覇権国である米国のドル刷増しとギリシャデフォルト懸念などのユーロの金融不安がひどすぎるために円高になっているだけだ。 あとひとつ、日本はデフレ国なので、日本国債の実質金利はインフレ国の米国債よりも高いことも、円が買われて円高が止まらない理由である。

 しかし本当に日本にとって円高・デフレが悪いのか? 経団連参加している重厚長大産業などは円高で苦しいかもしれないが、円高で潤っている企業や産業も多いに違いない。 デフレによる契約・派遣社員の若者のリストラは問題だが、預貯金に頼るしかない老人にとってはデフレは有難い現象だ。
 
 今の円高は、他に投資先がないグローバル資金が安定している日本円を買っているために過ぎない。他の良い投資先やちょっとしたきっかけがあれば、いつでもグローバル資金はそちらに乗り換えて円安に向かう。
 日本政府が円買い介入などしてみせても、日本は本当は円高を望んでいるはずと足元を見られているが、もし日銀が円紙幣を大量刷り増しする(償還しない大量国債発行も同じこと)気配を見せたりすれれば、その瞬間をグローバル資金は見逃がさず一気に円安に振れるだろう。政府日銀は制御不能に陥って日本国債は暴落し、国債金利は跳ね上がって膨大な国債利払いしなくてはならなくなる日本政府は立ち行かなくなる。こうなれば、政府日銀は自ら大インフレを引き起こして円の価値を半減させ、政府の借金をチャラ(すなわち第2次世界大戦敗戦後の日本のようなデフォルト)にして対応するしか術がなくなるが、これは日本の破滅だ。

 赤字の穴埋めに増税する代わりに、非償還国債(円紙幣刷り増しと同じ)を大量発行してインフレターゲットし、公共事業などでその金をばらまいて適度なインフレを起こし、景気を良くして税収を増して赤字を取り戻すとするアイデアもある。 無責任にこの施策を推奨する経済団体や政党、マスコミ評論家も多いが、この20年間近く、日本では国債発行して公共事業を起こして金融緩和し景気浮揚させようとした。これらは赤字国債発行ではないといっても、結局は期限のきた国債を償還できずに借り換えしているだけだから、実質非償還の国債発行と同じだ。 しかし国債ばらまきをしても、景気は浮揚せず税増収も上がらず、政府の借金赤字を積み増ししただけの結果に終わった。

 もしも財務省や日銀にインフレターゲット設定してインフレを暴走させず適度に円安コントロールするような金融施策ポテンシャルや高等テクニックがあるならば、彼らはそうしたいと思っているに違いない。その方が政府にとってはずっと楽だからだ。 しかし、その様な高度金融施策の実行能力は彼らにはない。日本政府が財政規律をゆるめようとする気配を見せれば、世界のグローバルハゲタカファンドがここぞとばかり円を売り浴びせてくる。日本の銀行や郵貯、さらには資産家達も日本国債を投げ売りして外国債を買いあさるだろう。日本国債の暴落と、引き続く大インフレの始まりだ。

 インフレターゲットが失敗して日本が大インフレになれば、政府の国民からの借金がデフォルトされて第2次世界大戦敗戦後のように日本政府の国民からの膨大な借金がチャラになる。 このデフォルトは政府にとっては良いかも知れないが、預貯金していた日本国民にとっては悲惨な状況が待っていることになり、一国の為政者が取るべき施策ではない。このようにインフレターゲット施策は国民にとっては良いことではない。

 結局、野田政権では、11兆円の大震災復興資金も堅実に増税でまかなうことに決めて、やむなく現状の円高安定を図っている。 これはインフレターゲット政策を遂行する能力がない日本政府としては、致し方ない妥当な政策であると、私は評価する。

 さて、日本国内の預貯金総額は最近になって急減しており、2011年中に1千兆円を切る。これは、いわゆる昭和22-24年生まれの団塊の世代がいよいよ退職して預貯金を取り崩し始めたことと、若い契約社員の給料が低くて預貯金に回す余裕がなくなったことによる。 一方、日本の国と地方の債権発行総額は、2011年で950兆円ある。これまではその自治体と国の負債のほとんどが日本国民の預貯金で消化されていることが日本の強みであった。 しかし、東北大震災の復興政策影響もあり、2012年には日本国民の預貯金総額と、政府自治体の負債発行総額がクロスする。 もはや日本国民の預貯金で負債発行をまかなえなくなったら、そのときは情けないが中国かアラブ詣でをして日本国債を買ってもらうしかない。 これはそう遠い話ではない。

 いずれにしても、人口が減少してゆく国というものは、預貯金もGDPも減って経済活動が縮小し、通貨も徐々に安くなってゆくことは避けられない。 そのように国民も覚悟すべきである。 其の日本の国力の低下をいかにうまくソフトランディングさせるか。そのくらいしか政府・日銀の腕の見せ所はない。
 しかしながら、莫大な負債を抱える日本政府がこの数年内に増税を実施できなかった場合に、たまらず大量の国債発行や円紙幣刷増しを実行する可能性はある。 しつこく言うが、そのときにはグローバルハゲタカ資本はすぐに反応する。その結果、日本国債の価格が暴落して国債金利が上がり、日本は歯止めのきかない円安、次いで大インフレに振れる。それは、政府財務省や日銀の責任問題になる。 彼らはそれを恐れて、必死に大インフレを食い止めようとしている。

 今の円高だけのせいではなく、国外販売市場の確保や日本での雇用人件費高騰などの諸要因のため、いずれにせよ2015年までには日本の輸出企業の製造業拠点が国外流出して経団連構成企業などの国内生産拠点は喪失してしまう可能性は高い。生産拠点流出後の円安は、日本にとってはもはや何らメリットがなく、むしろ輸入石油や食料品の高騰を招き、日本の国民生活の破綻に向かう怖れがある。 そのため、財務省・日銀は今の円高状態もできるだけ長く維持する方がましと思っているが、人口が減ってきている日本ではいずれは円は安くなる事は避けられない。 ソフトランディングさせることができるか、ハードランディングしてしまうかだけの違いである。

 微妙な国際関係のバランスの上に成り立っているこの経済問題である。TPP参加問題などは、端的にいえば、縮小しつつある世界貿易のなかで日本が中国経済圏に入るか米国経済圏に入るかの選択を迫られているということだ。 これらの国際経済バランスなどのきっかけで、まず日本国債が暴落して金利上昇し、心ならずも極端な円安・大インフレに向かってしまう可能性はこの10年内に5割くらいはあると、私は予測する。
 まあ、日本国債が下落し長期金利が上がり始めたら、そのときは歯止めの効かない円安・大インフレの予兆だから、老後資金を貯めている庶民は急いで郵便貯金や銀行預金を解約してブラジルやカナダ、オーストラリアなどの資源大国の国債を購入してインフレヘッジすることだ。 または、今のうちに貯金を下ろして、家庭用ソーラー発電システムなどの設備投資をしておくことだ。10年内で購入費用が償却できるソーラーパネルであればインフレヘッジになり、しかも日本自前の電力エネルギー生産にも貢献できる。 間違っても、高くなりすぎた金塊などを購入すべきでない。 
   −以上−
2011年10月8日
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