2012年4月の政局から読み解く日本経済の将来。政府・財務省、日銀による消費税増税、経済成長戦略とインフレターゲットで、10年後の日本の物価はどうなる?

 インフレ防止の守護神とされる日銀も、2012年2月14日、「物価が下がり続けるデフレ脱却と物価安定のもとでの成長に向けた姿勢をさらに明確化する」として、新たな中長期的な物価安定のめどを決めた。すなわち消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるまで実質的なゼロ金利政策で金融緩和を推進する。年に物価1%上昇が事実上の金融政策の目標であることを明記した。

 日銀は現在、政策金利の誘導目標を年0〜0.1%とする事実上のゼロ金利政策を採用している。ゼロ金利政策は、企業や個人が低金利でお金を借りやすい環境を続け、経済が活発になってモノが売れることで物価が上がるよう促す。日銀はこのたび10兆円の基金増額による追加緩和を決定したことについて、最近の前向きな動きを支援し景気回復を確実にするためと説明している。 新たに導入した「物価安定の目途」とあわせ、デフレ脱却と持続成長の実現に向けて日銀の姿勢を明確化した。
 米連邦準備理事会(FRB)が先に公表した物価安定の考え方をインフレターゲットと呼ぶのであれば、今回の日銀の枠組みはFRBの言うインフレターゲットに近い。さらに、追加緩和により、基金による月間の国債買い入れ額が従来の3倍に膨らむことになる。

 日銀が金融政策で目指す物価上昇率を1%とする考えを明確にしたうえで、実現のために資産買い入れ基金の10兆円増額に踏み切ったことに対し、政府内からは、デフレ脱却への強い意志の表れと評価する声が相次いだ。財務省からも 「インフレターゲットなど邪道と言っていた日銀も今度は相当思い切った」と評価の声があがった。日銀決定後に会見した財務相は、日銀が「金融政策で目指す物価上昇率を明確にした」ことを評価し、合わせて実現に向けた具体的措置を決断したことを「強い決意の表れ」と高く評価した。
 市場はこの政策を好感し、2012年3月段階での為替は、1ドル83円、1ユーロは109円まで円安に振れた。この政策と米国市場の活性化を好感して株価も大幅上昇した。 日銀がこのたび1%であれインフレターゲット設定に踏み込んだことは、実質上一万円札を刷り増して一万円の価値を低め、ミニバブル化も容認したことだが、この日銀政策はさしあたり成功したと評価された。


そこで、次は「消費税増税」についてである。
 政府民主党は、3月30日反対意見を押し切り、消費税増税の閣議決定に持ち込んだ。国会を通るかどうかさえ怪しい閣議決定だが、現在の消費税率5%を2014年に8%、2015年に10%に引き上げて、年金や社会保障にあてる法案だ。この増税分を全額社会保障にあてるかどうかははっきりせず、いずれはさらなる増税による財政再建も視野に入れているとされる。 
 政府の消費税増税10%の税収だけでは財政再建には全く足りないことは、専門家ならずとも理解している。増税だけで財政再建させるならば、25%以上の増税が必要となる。 25%増税が無理ならば、まずは手始めに10%増税すると同時に年率2-3%程度の経済成長もしくはインフレさせなければ、積もり積もった日本の財政赤字は解決できないことは明白だ。

 政府・財務省は最近、「今後の日本は実質2%、名目3%経済成長を目指す」としているが、「実質2%、名目3%経済成長」というのは、微妙な表現である。 これが「実質、且つ名目」という意味ならば、インフレ(物価上昇)率は1%ということである。「実質、もしくは名目」という意味ならばインフレ率3%で達成できる。
 実際のところ実質2%経済成長は、これからの日本の人口減や人口オーナス状況下で一人当たり3%も成長させなくてはならないから達成不可能である。 一方で、名目3%成長だけで良いのならばバブルを容認してインフレ3%にすることで達成できるが、努力せず安易な経済再建の道を選んだ国と見做されて日本政府の信用は傷つくだろう。

 3%インフレとは、10年後には国債の価値が3割減になることを意味している。国債だけでなく預貯金の価値も3割減になる。例えば3%インフレならば、あなたの1000万円の預貯金は10年後には700万円の価値しかなくなるということだから、預貯金を取り崩す老後生活を考えている庶民にとっては一大事だ。さらに20年後には300万円の価値しかなくなるのだ。

 予算編成・国債発行に責任を持つ政府・財務省は、予算編成ができなくなる国債価格暴落や国債利回り上昇などは何としても避けたいと考えて、日本国債価格低下や破壊的インフレへのハードランディングを最も危惧している。 そのため財務省は円安に誘導して景気浮揚させ消費税増税はやりやすくなるが、国債価格下落だけは引き起こさないと期待している2−3%インフレターゲットへのソフトランディング着地点を必死で探ぐっているが、うまく行くかどうかはこの1−2年の舵取りにかかっている。

 増税を閣議決定したものの法案が今国会で成立するかどうかは全くわからない状況だが、もしも今年増税法案が成立しなければ日本もギリシャと同じ信用不安のある国と国際市場から見られる。その結果として国債相場が下落し国債利回りが跳ね上がって日本財政が破綻し、国民生活も破壊的インフレに見舞われて物価などが倍になる可能性さえある。この日本経済のハードランディングはだれも望まないシナリオだ。

 しかしたとえ増税法案が今国会で成立しても、インフレ(物価上昇)率の1-3%は覚悟しておかなければならない。すでに日本政府や日銀はそのようにインフレターゲットをしてしまっているのだから。 現国会での与野党の議論は、インフレ(物価上昇)率をどれだけ増やせるのかの痛みの押し付け合いに過ぎず、インフレターゲットでインフレ率は1-3%のどこかに設定されている。 もしもインフレが1%に収まれば貯蓄を取り崩す高齢者にとって有利だし、3%になれば借金が多い若者や資金活用に長けている企業が有利になる。

 私は、人口減で赤字財政のためバラマキ公共事業もできない日本の状況では「実質経済成長1%、且つインフレ(物価上昇)2%」とするのが精一杯のところだと思う。 10%増税した後の30年間を、「実質経済成長1%、且つインフレ(物価上昇)2%」でやって行くということだ。 そうすれば、実質経済成長率1%で日本は財政再建できるし、10年後の庶民の貯金目減りも2割で済む。しかしそれでも、20年後には預貯金が4割も減ってしまう計算になるので、預貯金が頼りの高齢者は預貯金を活用して貯蓄の目減りを減らすことも考えなくてはならないかもしれない。 

 狭いラクダの孔を潜り抜けて、なんとか将来の日本が持ちこたえて行くことを願う。
           --以上--
2012年3月31日
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