経済産業省総合資源エネルギー調査会の2012年5月の基本問題委員会で、2030年の発電全量1兆kwhに占める原子力発電比率の案(0、15、20-25%)が出そろった。 8月中に政府が20年後の原発比率を選択するが、この3択は将来産業構造や日本人のライフスタイルを決める非常に重要な決定事項となる。
 総合資源エネルギー調査会の基本問題委員会において、2030年時点での日本の年間発電全量1兆kwhに占める原子力発電比率の案(0−25%)が出そろった。 この事務局案をもとに、2012年8月中に国民3000人の意見を参考にして、政府責任で20年後の日本の原発比率を決める。 この原発比率決定は非常に重要であり、プルサーマルを含む日本のエネルギー活用の将来計画を決定づける国民的コンセンサス事項となると予測される。

 この総合資源エネルギー調査会報告書案は政府に提出され、閣僚のエネルギー・環境会議で8月末までに最終決定し、日本のすべてのエネルギー需給に関する基本計画に反映されることとなった。 この原子力発電比率についての当初の事務局原案では、原発0%、15%、20−25%、現状より多い35%であった。そのほかに電力企業が多額の事故補償保険金の積み立てを行い市場原理に原発比率を任せる案もあった。 しかしそのなかで、エネルギー使用業界などの原発村委員が主張した35%案は、さすがに国民世論を逆なでするとして最終的には事務局案から排除され、0%、15%、20−25%の3つの案http://www.yasuienv.net/EneKanRep.htm となった。

 エネルギー・環境閣僚会議における具体的な決定プロセスは明らかになっていないが、NHK報道などによると、まず報告書の原発比率3案についてパブリックコメントなどで国民3000名から意見を出してもらい、さらに抽出された300名による意見交換を行ったのちに、閣僚会議で原発比率を決定するというプロセスをとるようだ。 原発比率は全国民の将来に直接関係する重要事項なので、原発村利益代表グループと原発絶対反対グループの極端な意見だけで決めたくないとのことのようだが、複雑なプロセスであり本当に8月末までにまとまるのかどうか。

 民主党閣僚細野原発担当大臣の2012年6月時点での発言によると、2030年時点の原発比率は日本の年間発電全量1兆kwhの15%、すなわち1500億kwhにしたい意向だそうだ。 これは、新規原発を建設せず40年経過後廃炉すれば2030年には原発比率は自動的に15%になることから、脱原発依存にも合致し妥当とするものである。 しかし、2030年以降に原発15%を維持してゆくのか、それとも新規原発を建設せずに将来的には原発ゼロを目指すのかどうかについては先送りしている。

 ちなみに原発1基は、100万キロワット= 1ギガワットの発電能力を持つ。 原発事故前の2010年時点では、約50基の原発を昼夜稼働(定期点検や故障のため、発電能力に対する2008年稼働率は7割弱)して日本の年間発電全量1兆kwh = 1百万Gwhの約25%をまかなっていた。 なので、もしも日本に原発が200基ほどあれば、原子力だけで日本の発電全量をまかなえる計算になる。これまでは原発2基で日本の総発電量の1%分を賄っていた(すなわち大飯原発2機を再稼働しても、日本の全発電量のたった1%分しか賄えない)・・・・・・・・・・・・。
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 さて、脱原発依存自体はすでに決まったとして、2030年時点の原発代替のエネルギー源についても報告書案は算出している。 原発比率15%案では再生可能エネルギー活用発電が30%必要であり、原発20−25%案でも再生可能エネルギー活用が25-30%必要である。 それ以外の電力は、火力発電と節電で乗り切る算段であり、結局、いずれの場合でも発電全量の30%ほどは再生可能エネルギーに頼るしかない。
 そのこともあって、2012年7月スタートする再生可能エネルギー発電の電力会社による20年間買い取り制度では、新規参入メガソーラー発電業者にとって有利な高値の価格設定がなされたところである。

 日本の原発事故前の2010年統計では、再生可能エネルギー発電は日本の年間発電全量 (年間1兆kwh = 10000億kwh = 1百万Gwh) の11%となっているが、実はそのうちの9%は従来型のダム水力発電量によるものである。 水力以外の太陽光、地熱、風力、マイクロ水力などの発電量を合わせても、その実態は2%に満たない。 今後20年で水力発電ダム建設をどんどん進めても、9%を12%にする程度が精一杯だろう。とすると、再生可能エネルギー発電分として2030年に期待されている30%分のうち、18%(年間1800億kwh)は、太陽光、地熱、風力、潮力、バイオマス火力、マイクロ水力でまかなうしかないことになる。

 このうち少なくとも太陽光については全量買い取り制度の発足などで、2012年度末までには全国で累計8ギガワットに相当する家庭屋根用や業務用メガソーラーなどのパネルが設置着工される見込みだ。 ちなみに、2012年6月の資源エネルギー庁の発表では、業務用(非家庭用)再生可能エネルギー(メガソーラー太陽光、水力、風力、バイオマス、地熱など)発電施設は、2012年度中に2・5ギガワット建設申請されているそうで、このうちメガソーラーの建設申請が2ギガワットを占めたそうだ。

 
家庭用およびメガソーラー太陽光発電の累計8ギガワットのパネルによって、2013年には1年間に日本で96億kwhずつ発電できる(夜間や雨の日があるため発電能力に対する稼働率は1.3割)ので、日本の年間発電全量の1%を太陽光発電だけでまかなえるようになる。 太陽が出ている昼間の発電に限れば、2%以上をソーラーだけで賄える勘定になる。
 さらに今後20年かけて家庭用・業務用のソーラーパネルを増やして、2030年に
80ギガワットと今の10倍に拡大すれば(一年間に3ギガワット強ずつソーラー増設する)、2030年には日本の年間発電全量の約1割の0・1兆kwhをソーラー発電でまかなえる。しかもエアコンが必要な昼間だけに限ると日本の全発電量の2割分をソーラー発電だけで賄え、ピークカット節電効果も大きい。 このソーラーによる0・1兆kwhの発電量は、耕作放棄地を農地のままパネル設置(農水省がソーラー電気を農業生産物と認定し、個々の農家が従来の米麦収穫からソーラー電気収穫に転作できるようにするのが最も効果的)などの措置を行えば敷地的に十分だ。農家が農地法に触れずに自分の農地の作物を転作するだけだから、農業委員会の認可や農地買収問題やメガソーラー利権なども生じない。 
 この程度のソーラー発電量ならば、従来の日本の送電網を使っても電圧変動を楽々受容できることは、すでにドイツなどで実証済みである。 ちなみにドイツでは、2012年現在ですでに26ギガワットのソーラーパネルを国内に敷設してドイツの電力需要の4%をソーラーで賄い、再生可能エネルギー発電全体では20%以上を賄っている。

 さて、それでは残りの8%を地熱、風力、マイクロ水力の再生可能エネルギーでまかなえるかどうかだが、20年かけてこれらの再生可能エネルギー発電量を年間800億kwhにすることは、風力発電のポテンシャルを考えればさほど難しくないと予測する。むしろ風力発電の方が発電ポテンシャルは大きいとも言われている。もちろんそのためには、各地の電力会社間での電力融通を可能にするような規制緩和と、送電網やバッテリーなどのインフラ整備が前提になるが。
 原発比率15%であれ20%であれ脱原発依存の方向はすでに決まったのだから、今後は原発村委員も抜け道を探そうなどと姑息なことは考えずに、何としてでも再生可能エネルギー電気の割合を20年後の2030年までに30%に増やしてもらうしかない。

 休止中の原発についても、安全基準を満たす半数程度の原発(500年に1回の津波、大地震、どこかの国からのミサイル攻撃にも耐えうる安全基準が前提)についての再稼働は認める必要がある。  しかし、原発再稼働をスムースにするためには、電力企業も原発立地場所から80キロメートル圏内は電気料金を値引く(20キロ圏内の住人は電気料金8割引き、50キロ圏内は5割引き、80キロ圏内は2割引き)くらいの距離別地元優遇インセンティブを考えてはいかがだろうか。
 
原発は絶対安全などとは言えない危険迷惑施設であることが福島事故により明らかになったので、今後は電源3法地元交付税とか寄付金など、首長だけが儲けているのではないかと邪推されそうな怪しげなバラマキを受けずに、すっきりとした原発再稼働インセンティブ対価を要求すればよい。原発立地自治体は危険な迷惑施設を受け入れる代わりに明瞭な対価を要求すべきで、電気代半額を武器にしてどんどん工場誘致し地元をにぎやかに発展させれば良い。 なにも都会の住民のために危険な原発再稼働などしてくれなくとも結構なのにと、私などは思ってしまう。

 いずれにせよ、これまでの原発予算は縮減されて再生可能エネルギー発電に振り向けられるから、電力会社も今後バブル化する再生可能エネルギー発電事業に乗り遅れないようにした方がよい。 目標さえしっかり決まれば日本人は一直線でやり遂げる能力を持っている。 電力会社以外にも再生可能エネルギー発電事業に乗り出してくる企業が増えてくると予測される。 原発業界については、今後は原発の廃炉化や放射能廃棄物処理業に注力してゆけばよいだけだ。 仕事は山ほどある。 
 --以上--
2012年6月24日
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