東京電力福島第一原子力発電所事故国会事故調査委員会の報告書を2012年7月に公表。この国会委員会は官僚や政治家、原子力村関係者を除外した民間人有識者委員で構成され国政調査権も活用。 2011年3月の福島原発事故は、規制側の原子力安全保安院が事業者側の東電の虜となっていたために起こった原発事故であり、人災だったと断定。

 東京電力福島第一原子力発電所事故を検証した国会事故調査委員会の報告書が2012年7月に公表された。政府事故調査委員会報告、東電事故調査委員会報告など4つの報告書がすでに出ているが、民間委員を加え国政調査権による証人喚問も行って纏めただけに、この国会事故調査報告書がもっとも原発事故の真実に肉薄した報告書であるとの評価が高い。
 
次の衆議院選挙は2012年中に行われるとの予測がある。原子力発電をどうするかや原発再稼働は日本の将来エネルギーを左右する国民的課題であり、総選挙の大きな争点となるであろう。 この報告書の提言を真摯に受けとめず、従来のように財界や原子力村のほうばかり向いて対応する政党は、いずれも2012年総選挙での苦しい戦いを強いられよう。


さて中日新聞2012年7月5日社説などから引用すると、
 --東京電力福島原発事故を検証した国会事故調査委員会が報告書をまとめた。 事故は東電や政府による「人災」と断じた。原発規制の枠組み見直しは急務だ。 「個々人の資質や能力の問題でなく、組織的、制度的な問題が、このような『人災』を引き起こした。この根本原因の解決なくして再発防止は不可能である」 「過酷事故によって住民の健康に被害を与えるリスクよりも、経営上のリスクをまず考える東電は原子力を扱う事業者の資格があるのか」。 歴史的な大事故の原因究明を託された国会事故調の総括は、国や東電への極めて厳しい批判が並んだ。原発をともに推進してきたのだから当然であろう。

期待された解明力
 福島原発の事故調査委は政府、民間、東電と合わせて四つに上ったが、国会事故調は特別な存在である。国政調査権という強い権限をもち、必要に応じて国会での証人喚問を求めることができた。国会議員でなく民間有識者による調査機関が国会に設置されたのは、憲政史上で初のことだった。それだけに国会事故調に寄せられた公平な視点からの事故原因の解明や責任追及への期待は高かった。 半年かけて、参考人聴取は三十八人、ヒアリングは延べ約千二百人に上り、他では実現しなかった東電幹部らの公開聴取も応じさせた。調査権に基づく請求は業界団体や規制当局などを対象に十三件で、権限を駆使して真相に迫ろうとしたのは間違いないといえる。 

 六百四十ページに及んだ報告書が最も強く訴えているのは、事故は人災であり、適切に対応していれば防げたという点である。 東電は耐震対策を先送りし、経済産業省原子力安全・保安院はそれを黙認、さらに津波対策でも敷地高を超える津波が来た場合は全電源喪失に至ることは東電、保安院とも認識していた。

食い違う事故原因
 何度も対策を講じるチャンスはあったが「いわば無防備のまま、3・11を迎えた」と指摘、事故は自然災害でなく、歴代の規制当局や東電経営陣による明らかな人災と断じた。 東電は、事故の直接的原因について早々と「津波」であるとしてきたが、国会事故調はこれに大きく異を唱えた。「1号機の地震による損傷の可能性は否定できない」と指摘した。地震による損傷が起きていれば、他の原発でも危険性があることを意味し、東電だけでなく全国の原発で耐震強化といった問題がでてくる。事故のカギを握る重要な機器類は高線量で検証することができない原子炉建屋などにあるため、国会事故調は引き続き第三者による検証を求めた。だが、実証なしに原因を「想定外の津波」に限定しようとする東電の責任回避の姿勢は明らかだ。そこに、安全対策より経営コストを優先させようとする経営姿勢が透けて見える。


政府への要望と、今後の対応
 もう一つ、報告書が強調しているのは、官邸をはじめとする政府や東電の危機管理体制がまったく機能しなかった点だ。緊急事態宣言が遅れた官邸や、災害対策本部の事務局としての役割がある保安院は「事故が起きた緊急時の準備も心構えもなく、その結果、被害を最小化できなかった」と指摘した。 痛恨の極みである。
 問題となった菅直人首相(当時)の現場介入や東電の全面撤退騒ぎも含め、報告書が重く見ているのは、個人の過ちよりも組織的、あるいは法的、制度的な欠陥だ。「関係者に共通するのは、およそ原子力を扱う者に許されない無知と慢心であり、国民の安全を最優先とせず、組織の利益を最優先とする常識である」と痛烈に批判した。さらに情報や知識で東電が保安院に勝り、規制する立場と規制される立場の「逆転関係」といった監督機能の崩壊を指摘するにいたっては、原発事故は必然だったと思えてくる。

 ただ、報告書も万全ではない。事故原因の詳細な究明が未解明だったことに加え、廃炉の道筋や使用済み核燃料問題などは手が付いていない。過去、原子力政策を推進してきた自民党時代の責任には触れなかったのは、踏み込みが足りなかったと言わざるを得ない。 国会事故調は、民間中心の独立調査委員会の活用や国会による規制当局の監視など七項目の提言を残した。 これらを実現していくのは政府と国会の責任である。いまだに報告書の取り扱いや政策への反映について議論もないのは、怠慢としかいいようがない。
 暫定的な安全基準で大飯原発の再稼働に踏み切った政府も、報告書の重みを読み取ってほしい。 報告書は真っ先に訴えている。「福島原子力発電所事故は終わっていない」と。



★国会事故調査委員会のメンバー一覧(ウィキペディアより引用)★
   「委員長」
•黒川清  (医学博士、東京大学名誉教授、元日本学術会議会長)
   「委員
•石橋克彦 (地震学者、神戸大学名誉教授)
•大島賢三 (独立行政法人国際協力機構顧問、元国際連合大使)
•崎山比早子 (医学博士、元放射線医学総合研究所主任研究官)
•櫻井正史 (弁護士、元名古屋高等検察庁検事長、元防衛省防衛監察監)
•田中耕一 (化学者、株式会社島津製作所フェロー)
•田中三彦 (科学ジャーナリスト)
•野村修也 (中央大学大学院法務研究科教授、弁護士)
•蜂須賀禮子 (福島県大熊町商工会会長)
•横山禎徳 (社会システム・デザイナー、東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム企画・推進責任者)
   「参与」(2012年2月9日任命)
•木村逸郎 (京都大学名誉教授、財団法人大阪科学技術センター顧問)
•児玉龍彦 (東京大学アイソトープ総合センター長)
•八田達夫 (大阪大学名誉教授、政策研究大学院大学名誉教授


                -以上-
2012年7月7日
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