政府のエネルギー・環境会議が参考にする「エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会」が全国11都市で開催。 出席者は原発ゼロ%が7割、20-25%が1割、15%が1割らしいが、政府は国民意見を原発再稼働やエネルギー政策に反映させるのか。 
原発を再稼働させるには、原発立地からの距離に応じた新規な電気料金値引き制度を作らなくては無理。 再生可能エネルギーを3割に増やすには、太陽光発電電気を農産物と定義しなおして、休耕田畑農地での転作ソーラー発電農業を普及させなくては無理。

 政府の「エネルギー・環境会議」(議長:古川国家戦略担当大臣)は、2030年のエネルギー・環境に関する3つの選択肢(2030年原発依存度が①ゼロシナリオ、②15シナリオ、③20~25シナリオで、いずれも再生可能エネルギー割合を3割に増やす)を取りまとめた。この選択肢について国民より直接意見を聞く「エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会http://kokumingiron.jp/」を、2012年7月から全国11都市で開催し、「本意見聴取会では、エネルギー・環境戦略の選択肢について御参加頂く方からの意見表明の場も設け、本意見聴取会をはじめとした国民的議論をもとに2012年8月にエネルギー・環境の大きな方向を定める革新的エネルギー・環境戦略を決定し、政府として責任ある選択を行う。」 としている。
 しかし、私としては、聴取会意見を参考にして次期総選挙で国民の審判を仰いでもらうほうがすっきりする。これは、原発比率に関して国民投票で決着をつける意味だ。11月頃にあるとされる次期総選挙では、民主党も自民党も意見聴取会を参考にして原発をどうすべきかそれぞれ旗幟を鮮明(ぼんやりした選挙公約ではなく、工程表までつけたマニフェスト)にして、選挙戦を戦ってもらいたい。 その国民投票の決着がつくまでは原発の再稼働はあってはならない。 大飯原発の件では、根拠のある安全基準も無しにズルズル再稼働したことで国民の怒りを招いたことを、政府や政党は肝に銘じるべきだ。

 さて、7月20日までに埼玉、仙台、名古屋での意見聴取会が終わり、その発言記録映像もある。これまでの聴取会を通じて、種々の問題点も見えてきた。政府は40年廃炉で自然に到達する15%シナリオを落としどころにしたいようだが、現実は15%シナリオの人気は低い。ゼロシナリオが一番多く、20-25%シナリオがそれに次ぐ。
 しかし20-25%シナリオ賛成者には電力企業関係者の応募が多いことが問題になった。仙台では東北電力社員が会社の方針として意見を述べた。名古屋では個人の意見としながらも、中部電力社員が「フクシマで放射能で直接死んだ人は一人もいない」と発言し、中部電力がお詫びをする騒ぎとなった。結局、電力会社員の意見陳述は禁止されたが、これもおかしな話で、組織的動員による会社としての意見ではなく、もし個人としての意見陳述ができるものならば積極的にやればよいと思う。 もっとも、その発言に関して中部電力がお詫びをしたが、そういうことをすれば、電力会社が発言に関与したことを意味しよう。

 意見陳述では、太陽光発電などの再生可能エネルギー割合を3割に増やせば、電気料金が大幅に上がるのではとの意見が多かったが、これは一面的な見方と私は考える。 なぜならば、原発コストの政府試算では2004年には5-6円/kwhであったが、フクシマ後では9-12円/kwhとすでに約2倍に原発コストが上昇している(この発電コスト試算は政府内閣府国家戦略室のコスト検証委員会の2011年12月公表データであり、米国エネルギー省が発表した2016年稼働予定の発電コスト試算ともよく合致している)。 このコストアップの原因は、原発費用に津波防波堤等の安全設備対策費や事故補償金の積立、放射能廃棄物処理や廃炉費用を算入せざるを得なくなったためである。
 コスト検証委員会試算では2010年原発コストは9-12円/kwhだったが、そうならば、LNGガス火力発電や石炭火力発電のほうが原発よりもコストが安い。LNGガスコンバインドサイクル発電を使うと、さらにコストを安くできる。また全発電中1割以上も使われている石油火力発電は40円弱/kwhと高く、2010年時点の太陽光発電と同コストである。しかも2030年になっても石油火力コストは高いままだが、太陽光発電は技術革新により10-20円に下がる。 このように、電気料金高騰の原因を再生可能エネルギーだけに求めるのは無理がある。
 
 結局のところ、原発を全部再稼働して再生可能エネルギーを使わないシナリオでも、しっかりとした安全対策
大津波・地震やミサイルテロなどによる500年に一度の大災害にも耐えうるような安全対策)を50基の既存原発にきちんと装備実施すれば、原発コストも当然上昇して2030年頃の電気料金は必然的に今の2倍になる。 すなわち、原発施設に500年に一度の大災害にも耐えうる安全設備を備えるからには、どのシナリオをとってみても電気料金が2倍になるのは避けられない。このことは、今から国民みんなが覚悟しておくべきことである。
 
しかし自然災害以外に、どこかの国から飛んで来るかも知れないミサイルテロにも安全安心な原発・放射性廃棄物貯蔵施設とは本当に実現可能なものなのか? もう想定外は許されない原子力規制委員会が、どのように判断して原発の安全信頼性を国民に担保するのかは興味があるところである。

 さて、絶対安全のはずの原発導入後50年も経たないのに、フクシマ事故が起こってしまった。 まさかとは思うが、もしも国民が 「100年に一度くらいの原発事故は起こっても良い」 と言うのなら、今までのように安全軽視原発をどんどん稼働することで安い電気を生産できるが、それは原発立地が納得しないであろう。 さらに、大企業向けダンピング電気料金(家庭用料金の半分以下)は、安全軽視で安価な原発電気をジャブジャブ生産してこそ可能であったが、今後は今までのようなダンピング料金で大企業工場向けに電気を供給することは無理だ。 その意味では、大量に電気を使う大企業工場は海外に工場移転するのもやむを得ないかもしれない。 大企業の海外移転の原因は電気料金だけでなく、人件費や法人税、市場確保など6つくらいの要因があると聞いているので、電気料金設定だけでは海外移転の流れは止めようがない。
 
ここにきて、財界3団体は安価な電気確保のための統一要求として、「原発比率25%以上にして且つ再生可能エネルギー比率の大幅引下げ案を政府に提出する。」らしいが、原発コストは今後は2倍になるのだから、もう大企業への安価な電気供給は難しい。そもそも原発比率25%ならば、今から原発を5基くらい新設しなければならないが、どの電力会社が原発新設するというのだろうか。 経団連関連の大企業工場は、これまで安全軽視の原発電気をダンピング料金で使って良い目をしてきたのだ。もうこれ以上は国民にたからないでほしい。 あまり国や政府に頼ってばかりいると、そのうちに経団連は農協化した財界団体などと言われるようになってしまう。
 さらに日本の電力会社は、利益の大部分を大企業工場ではなく家庭用電気料金から得ていることも明らかになってきている。家庭用電気料金は政府が決定するが、その値上げ原案は電力会社と癒着している経済産業省が作っているので、家庭用電気料金が高く設定されがちだ。 しかし、日本には消費者庁もあるのだから、今後は、家庭用電気料金値上げの際には消費者庁が査定するようになることが望ましい。

 ★★さて、私の結論は、「15%シナリオを選択し、さらに2030年以後も原発比率15%を維持する」 ものである★★
 安全確保のためにはゼロ%が望ましいが、この選択はライフスタイルの大きな変更を伴うので私は選ばない。 また、20-25%シナリオは従来の原発比率26%とほとんど変わらず、フクシマ事故の反省が全く欠けているので、私としては受け入れられない。 それに対して、15%シナリオは妥協的ではあるが、500年に一度の災害に耐えうる原発安全対策をしたうえでエネルギー施策を運用することでライフスタイルの激変を緩和でき、電力ベストミックス戦略ともうまく折り合いを付けて、経済面でもソフトランディングできる可能性が一番高い。

 そこで、ソフトランディングのための二つの提案をしてみたい。

   「1」 もはや絶対安全ではなく危険施設になった原発の立地場所から20キロメートル圏の住民や工場の電気料金は8割引き、50キロ圏は半額、80キロ圏は2割引きくらいの電気料金を電力会社は設定することだ。原発自治体や電力管内とは無関係に、放射能汚染の可能性のある原発からの距離だけで自動的に電気料金割引きを決める(自治体や電力会社の認可制にしないことが一番大事だ) 
 
危険施設を置く迷惑料と地産地消の観点から、原発地元へのこれくらいの優遇措置は当然と思う。 都会の住民も電気料金が高くなるかも知れないが、原発立地のことを考えて受け入れてくれるはず。 また、電気をたくさん使う企業も、外国移転するよりも電気料金の安い原発立地圏に工場移転する選択肢を選べるから、一挙両得だ。

   「2」 太陽光発電は住宅屋根
(18年間で1-2千万戸の屋根)にソーラーパネル取り付ける施策であるが、これを農地へのパネル設置まで拡大して普及させることが重要である。 そのためには、農地法改正するか(農水省は6次産業化で農地法規制緩和しているが転用では土地課税されるのでパネル設置が普及しない。農水省はこれまで進めてきた食料自給率向上・農地集約化施策にあまりにも固執しすぎている)、 もしくは、柔軟にソーラー電気そのものを農産物だと定義(農産物再定義のほうが農地のまま転作できるから、施策としては有効)すべきである。 広いメガソーラー用地確保は困難でも、過疎地方にゆけば日当たりの良い耕作放棄地を高齢農家がそれぞれ分散保有している。 収穫農作物としてのソーラー電気を考えれば、実は米麦作などよりもよほど収益性が高い作物である。
 そこで、農協JAが、余っている預金を個々の農家に低利融資して農地用簡易型ソーラーパネル
(将来の再転作を可能にするため、農地はアスファルト舗装などはせずに黒いマルチビニルシートで覆うのみとする)を安価に設置する。農家は休耕農地を活用するか、あるいはこの農地でイモやカボチャ作からソーラー電気作に転作する。 個々の農家が自分の農地にパネル設置するのだから大規模ではならず農家年金の足しにするくらいの収益にしかならないが、この方策であればメガソーラー土地利権などとは無縁にすることができる。

 この国民のウィンウィン政策をとることで、日本におけるパネル設置量を2012年度末の7-8ギガワットから、今後18年間で10倍の80ギガワット(8千万キロワット)に拡大する。 このことにより、2030年には日本の総発電量の1割に相当する 0・1兆キロワット時を、この 80ギガワットソーラーパネルによる発電でまかなうことができるようになる。
 再生可能エネルギーとしては、ダムによる水力発電ですでに1割は達成済みであり、さらに1割を風力・地熱・バイオマス発電でまかなえば、日本の年間総発電量1兆キロワット時のうちの3割の 0・3兆キロワット時を再生可能エネルギーでまかなうことくらいは、十分に達成可能である。 
 再生可能エネルギー発電量が増えるほどコストの高い石油の輸入を減らせるので、長期的、継続的に日本の国益に資する。 なお、先行するドイツではすでにソーラーパネル26ギガワットを設置済みであり、総電力需要の4%、昼間に限れば1割以上を太陽光発電でまかなっているが、これによってドイツの送配電網に支障が起きたとは聞いていない。 よって、日本でも各電力会社の送配電ポテンシャルをもってすれば、さらに各電力会社間の電力融通を義務付けてしまえば各地の日照時期が平均化されて、わざわざ蓄電池を完備しなくとも家庭用ソーラー発電で電力需要の1割くらい供給しても送配電網に問題が生じるとは思わない。 
 ところで、今年の夏の節電要請に対してはいずれの電力管内でも5-10%の節電を達成したと聞いているが、今夏の昼間のピーク電力節約に太陽光ソーラー発電がどの程度貢献したかを電力企業はデーター公表していただきたいものだ。 各電力企業はソーラー発電量をすべて把握しているし、ソーラー発電は昼だけの発電だからピークカット電力量の計算は容易なはず。 まだ普及がほとんど進んでいない現段階でもソーラー発電によるピークカット効果がこれくらいあると認められれば、将来のソーラー導入策の弾みになると思うので、よろしく公表をお願いしたい

★上記2つの提案が受け入れられないのであれば、私は安全を重視してあらためてゼロシナリオを選択する。   -以上-
2012年7月20日
九州ホーム > 会員トピックス