決められない人口減少国日本と国家資本主義国中国の今後の経済問題 / 2012年11月28日習近平政権発足し、安倍政権ももうすぐ誕生。  尖閣諸島の領有権をめぐっての日中間の政治的緊張と経済戦争・・・。今後の日本と中国との関係はどのように進展するのか?
 一方で、中国抜きのTPPと、米国抜きのRCEPアールセップ多国間経済協定の綱引きが、現在まさに進行中。
「中国が陥る可能性のある中所得国の罠。一つの国への貿易輸出依存度を高めることの危険性」

 習近平政権が2012年末に発足したが、中国の株式市場は不振である。10年ぶりの新政権誕生であるので大幅株価上昇しても不思議でないが、実際はそうはなっていない。11月8日の第18回共産党大会開催に歩調を合わせるかのように下落に転じている。 しかし、2007年の第17回共産党大会のときはこれとは異なっていた。共産党大会の開会翌日に上海総合指数は6124ポイントと史上最高値を付け、投資家が先を争って証券会社の店頭になだれ込んだものである。
 あれから5年、株式市況は潮が引いたように閑散としており、11月19日の上海株式市場総合指数は心理的節目の2000ポイントを割り込み、11月27日には2000ポイントを完全に下回ってしまった。 これは2009年2月以来の安値であり、中国上海の株価指数は最高値の1/3以下になってしまっている。 日本の株価指数は現在、バブル時の1/4になってしまっているが、中国経済の将来展望も客観的市場予測では日本に近くなっているということだろう。

 中国証券報(2012.11.19付)は、「アナリストは、最近の銀行株の上昇は中国国有投資会社である中央匯金公司による買い増しの影響が大きいと見ている。10月11日、中央匯金公司が大手銀行4行の株式を約2億元買い増ししたと発表し、それ以後、4行の株価が上昇し続け、市場全体の反転上昇の下支えとなった。歴史的データを見ると、2011年の中央匯金公司による銀行株の買い増しも、その後の市場の上昇につながった」
 中国は共産主義というよりは、実際には国家資本主義の国である。国有投資会社が銀行株買支えに出動していることは不思議ではないが、買い支えなければ習近平政権での株価暴落に繋がりかねないという不安感があったのであろう。

 11.19付の大紀元も次のように伝えている。 「共産党大会が開幕した11月8日、同指数の終値は2071ポイント。翌16日にも下落が止まらず、2010ポイント台にまで下落」。 この一連の下落について、在米の中国問題専門家の石臧山氏は次のように見ている。 「新常務委員に保守勢力が多数を占めていることに市場に失望感が広がったためである。 構造改革派の王岐山副首相が経済担当から外れ、党員の汚職の取り締まりなどを担当する中央規律検査委員会トップに就任した。張徳江氏が常務委入りし経済難題解決の手助けをするが、これらの人事からは中国経済の中長期の将来性に市場としては希望が持てないと判断したのだろう」。
 今後も下落が続くと、9月26日に付けた今年の上海総合指数の最安値となる2000ポイントを下回る。 経済学者の韓志国氏は、「2000ポイント割れは時間の問題であり、2008年リーマンショック時に記録した1664ポイントにも接近する。社会、経済、証券市場の内在的矛盾によって株価の下落は避けられないとして、2013年の上海総合指数は2000ポイント以下で推移する。」と見ている。  中国政府は9月になってから1兆元(日本円で12兆円)もの公共インフラ投資を発表しているが、この財政出動が功を奏したとしても副作用としてインフレや不動産バブルにつながる可能性が高い。

 日本からの対中国直接投資(実行ベースで)が、2012年10月には前年同期比32.4%もの減少になった。株式市況はこれを嫌気して、11月20日の上海総合指数は前日比8.06ポイント安(0.4%下落)の2008.92で引けた。 売買高は昨年12月12日以来の低水準である。 日本の対中直接投資が大幅減になった原因は、9月の日本政府尖閣国有化に対抗した中国政府の「反日暴動デモ」である。これによって、日本企業特に製造業が自主的に中国への直接投資を控えた。 これが影響して日系自動車企業の中国人労働者も収入が減少して離職者が相次いでいる。 日系企業に就職を希望していた大学生は学生募集する日系企業が大幅に減って困惑しており、このご時世に募集をかけた小売系日系企業には、「政府が就職先を世話してくれるわけでもなし」と、就職希望者が中国各地から押しかけているそうだ。

 この自分たちで仕向けた直接投資の減少について、中国で日本を批判するものたちがいるが、これは滑稽なことである。 経済学者の謝国忠氏によると、「日本経済は金融危機以降、低迷から抜け出せないでいる。2012年も業績は下がり続けており、非常に厳しい状況にあることがわかる。日本が得意としてきた電子産業やモバイルネットワーク分野の業績や収益が落ち込んでいる。また国際市場をみると、自動車製造業は中国での業績が目立って低下している。韓国や中国に比べ、日本の競争力がこれまでほど強くはなくなっていることはもはや明らかだ」。「当然のことだが、日本企業の業績低迷は、これまでずっと依存してきた国際市場での投資の縮小と深い関係がある。海外投資の減少と製品輸出の低迷が、日本経済を冷え込ませてきた重要な要因だ。日本自身の総合的な国力が国際市場に与える影響力は経済力と釣り合っておらず、海外で拡張をはかる時代は過ぎ去ったといえる」。
 しかし、上記の指摘は事実とは異なる。今年は、昨年のような突発的な災害東日本震災やタイの大洪水がなかったので、中国での買い控えがあってもトヨタは今年販売台数世界一が視野に入っている。日本はハイブリッド車(HV)で世界の先鞭を切っているが、トヨタのHVは今年日本で100万台の販売実績になっている。一つの耐久消費財で年間販売高が100万台になると、その製品は世界的な普及段階に入るシグナルであり、HVはこれからグローバル規模で本格普及段階に入ったのだ。

 中国では、これまで電気自動車(EV)の開発に力を入れてきたが、技術的に困難であることから、全面的にトヨタとホンダのHVに依存する体制に切り替えようとしている。トヨタは用心深いから安心であるが、ホンダは中国に技術を盗まれないように気をつけたが良い。日産ルノーはこれまで技術を中国に完全解放する方策をとってきたが、それにもかかわらず今度の暴動で日産がもっとも被害が大きかったのは皮肉なことである。
 最近になって人民日報は、日系自動車工業のHVやEV工場に秋波を送っている。 燃費などの省エネルギー技術開発は中国の重要課題であると強調してみたり、「トヨタ中国」が「中国豊田」に名称替えすることを称賛している。 この調子だと、近いうちに中国政府は、自動車などの日本製品を暴動で壊した犯人は厳罰に処すとの発表を行って、日中関係の経済再構築を図るのではないか。
 そのように思っていたがちょっと違っていたようだ。中国の事情に詳しい筋によると2012年の反日暴動全体で逮捕されたのはよほど悪質だった約200名に過ぎず、そのうちなんと174人は傷害罪などの前科者だったが、警察は彼らをすでに釈放したそうだ。 2005年抗日デモでは学生主体だったが、今回は政府に不満を持つ貧困層や就職先がない学生が主体であり、かれらのうちの前科者たちがデモの破壊行為や日本商品略奪などを扇動したらしい。 中国政府は、前科者をわざとけしかけて抗日デモに参加させたりしていたのだろうか? もしもそうだとしたら、中国は何とも気味の悪い国である。

 謝国忠氏は「海外投資の減少と製品輸出の低迷が、日本経済を冷え込ませてきた」 としているが、実は日本の海外への直接投資は円高を背景に増加している。2011年の中国への直接投資についても1千億ドルを超え、香港・台湾という華人地域を除けば日本が1位であった。 2012年(1~9月)も、原発事故による海外展開の必要性もあり、日本が対中国投資で世界1位であった。 この年に日本が貿易赤字になったのは、原発操業中止で化石燃料の輸入が増えているという事情があるからに過ぎない。
 2012年10月に入ってから対中直接投資が前年比3割強も急減したのは、もちろん「反日暴動デモ」が引き金になっている。 今後は中国への直接投資が減った分はASEANへ振り向けられることになる。 改めてASEANを眺めたとき、 1.親日国であること。  2.社会不安が少ないこと。  3.賃金がやすいこと。  4.インフラ整備すれば将来の発展性が大きいこと、 などを総合的に判断すれば自ずからそのような結論に至るであろう。

 中国こそ2012年の貿易額(輸出入)は前年比10%増が目標であったが、6%増とほぼ半分に留まる見通しになっている。自国を棚に上げて日本経済批判を展開しても説得力がない。 丹羽前中国大使も、退任に当たり11月26日、「中国が日本企業の援助無くして経済発展可能というのは非常に傲慢な考えで、歴史が証明するだろう」 と述べた。これに対し、中国外務省の洪磊副報道局長は、「中日関係の改善、発展で果たした丹羽大使の努力を評価する。」と応えた。 中国政府も、尖閣反日を日中の経済問題にまで持ち込んだのは間違いだった、と最近では考えているようだ。 しかし中国は、本来共産党官僚が牛耳っている国家資本主義国であり、政治と経済は一体以外の何物でもない。
 中国の株式市況がどん底にあることは、中国の経済発展力が限界にきていることを示唆している。中国労働人口の高齢化、人口オーナスや国民経済格差などが影響するいわゆる「中所得国の罠」に陥りかけているのであり、中国では政治改革ができない限りはこの「中所得国の罠」から脱出できないだろう。

 日本と中国のお互いの貿易経済依存率は最近は3割に近づいていたが、これではまるで一つの貿易経済圏だ。日本国内の東北地域と中四国地域の間でさえも、3割も経済依存していることはない。
日中間でこれほど経済的に相互依存すれば、いろいろの摩擦が起きることは必至というものだ。 過去の日本の歴史を見れば、対米経済摩擦やタイでの反日経済デモなどは全て1国集中的に経済進出したことによる。

 最近のユーロ危機の例を持ち出すまでもなく相互の経済依存
(特に貿易輸出依存)が深まってくれば、最終的には経済統合から政治統合にまで進まざるを得ない。ヨーロッパ圏各国の政治統合でさえも困難を極めているのに、将来の日本と中国の政治統合なんて日本からすると誰しも考えたくもない課題だ。 北朝鮮の貿易の中国依存度は2012年にすでに7割にまで達したが、これは実質上すでに政治統合されていることだ。 韓国の対中国貿易依存度も3割に達して日米との合計よりも大きくなり輸出の中国依存も大きいので、韓国は政治的にも中国依存を深めている最中である。こうなると中国はだんだんと韓国の宗主国気取りになり、これに対して韓国国民の間には中国への反発も芽生える。

 
歴史的な教訓は、一つの国との貿易量が3割以上になり且つ輸出依存度が高いと、いずれは政治的な統合の危険水域にはいると言うことを教えている。 日本の経済界も製造業企業も、自社の儲けだけを考えずに、工場進出先を多極分散する方が日本としては無難といえる。 その意味で、今回の中国との摩擦によって日中間の貿易額が減少したことは、個々の企業にとっては困ることかも知れないが、日本の将来にとっては好ましいことだと私は考える。
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★★★2013年、米国と中国とのアジア圏経済協定(TPPとRCEP)の日本を巡る綱引きが進行★★★

●環太平洋戦略的経済連携協定すなわち中国抜きのTPP/
(参加検討12ヶ国:シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランド、アメリカ、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、ペルー、カナダ、メキシコ、日本)。 これ以外にタイ、フィリピン、台湾のほか、韓国や中国もTPPに関心を示しており、いずれはTPP参加する予定。
●東アジア地域包括的経済提携すなわち米国抜きのRCEP/
(参加検討16+αヶ国: ASEAN10カ国(インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイ、ミャンマー、マレーシア、カンボジア、ラオス、シンガポール、ブルネイ) + 域外6カ国(日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド)の16ヶ国。 このほかに、ASEANに加盟を希望している国 (現在は東チモール、モルディブ、パプアニューギニア)がある。
●なお、両方の経済圏協定に参加検討/ 
シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、日本の7ヶ国。 そのほか、タイ、フィリピン、韓国も?

 カンボジアのプノンペンで開かれた東アジアサミット(ASEAN+6+米露)において、ASEAN+6(日中韓印豪NZ)の自由貿易協定(FTA)による「東アジア地域包括的経済提携(中国の影響が強い略称RCEP、アールセップ)」を2015年までに締結すべく、2012年11月20日に交渉が開始されたところだ。
 東南アジア10カ国からなるASEANではすでにFTAを締結しており、RCEPはそれを拡大する形である。インドと中国、日韓を含むRCEPは世界の人口の半分を占める34億人の市場で、世界のGDPの3分の1を占め、結成されれば世界最大の自由貿易圏となる。 これは2011年の東アジアサミットで初めて提唱されたが、2012年から本格交渉に入る。

 東アジアサミットでは、RCEPの交渉と並行して日中韓FTAの交渉を本格化することも合意された。日中韓FTAは、RCEPの一部となる。すでにFTAを持つASEANと、2013年中に締結予定の日中韓FTAを合わせると、これは以前から構想されてきた「東アジア共同体」のASEAN+3EAFTA)となる。
 これにさらにインド、オーストラリア、ニュージーランド(印豪NZ)の3カ国を加えると、RCEP(ASEAN+6)になる。ASEANはすでに日本、中国、インド、韓国、豪NZと、個別に自由貿易協定を結んでおり、これらをつないでRCEPを作り、東アジアにおける共同体を実現する。 ASEANは緩やかな組織であるため、外交面では比較的目立たないが実はアジアの自由貿易圏形成における重要な黒子の役目を負っている。

 現時点では、RCEP交渉に熱心なのは中国だ。中国は過去にはRCEP結成に反対してきたが、最近反対を引っ込めたためRCEPの交渉が始まった。 これまで中国は「+6」のRCEPよりも先に、「+3」の日中韓FTA(EAFTA)を先で考えていた。なぜならば中国はすでにASEANを経済的には影響圏内に入れており、韓国も中国経済支配圏になってきている。 ASEAN+3のうちで、面倒なのは日本だけだ。  一方日本は、TPP交渉参加を睨みながら、+3(日中韓)よりも+6先行をもくろんでいた。
 +6になると、日本、豪州、インドが組んで中国に対抗する中国包囲網になりかねない。そのため中国としては、+6より先に日中韓FTA+3協定を先行させたかったのだ。 ところが最近、米国主導のTPP協定に日本参加の動きが強まり、その一方で豪州は経済面で中国重視を強める方向に転換したため、中国としては+3と同時に+6の交渉も開始する方向に舵を切った。 日本としては、これまで+6(RCEP)を主張してきたものの、尖閣問題やTPP参加交渉の膠着もあり、+6交渉にも腰が引けている感じだ。

 豪州は、鉱物や食料などの輸出品の最大の輸入国が中国なので、中国重視を強めざるを得ない。米海兵隊は2012年から「アジア重視策(すなわち中国包囲網)」の一環として豪州に駐留しているが、長期的な戦略としては豪州は中国重視の白書を作成している。 インドも以前は中国の敵だったが、ここ数年、中印はBRICSとして外界で足並みをそろえるようになり、インドは中露主催の上海協力機構にも入る予定だ。印中関係は敵対から協調にゆっくり転換している。 豪印が中国の敵でなくなると同時に、現在中国経済は輸出主導型から内需拡大型に転換して行く試みをおこなっている。この実施はなかなか困難が伴うが、中国にとって内需転換が行われなければ将来大きな政治負担を残すので、この政策は実行せざるを得ない。

 中国経済が輸出主導型だった時期は、豪印や日韓、ASEANなどと中国とは、米欧など輸出市場における競争関係にあった。 だが今後、中国が内需主導経済に切り替わるとなると、豪印や日韓などは中国市場に輸出したいので、中国に接近する可能性が高い。 中国は、周辺諸国からの輸出に自国の市場を開放する代わりに、周辺諸国に対して種々の経済的交換条件を出せる強い立場になる。どうせ自国市場を周辺諸国に開放するなら、より有利な条件でやりたいはずだ。 そこに、中国が今の時期に周辺諸国とのFTA交渉を進める意向がある。
 自国市場を開放して世界経済の発展に寄与することは、大国・覇権国としての重要な義務であり責務である。これまでの覇権国である米国は、軍事や外交だけでなく、消費の分野でも世界を主導し、自国市場を世界に開放していた。 もしも中国が東アジアの覇権国になりたいのならば、中国国内市場を拡大していく必要がある。 ここに、習近平政権になった今の時期に、中国が東アジアのFTAを進めたいもう一つの理由がある。

 ASEAN+6RCEPは以前は日本主導であったが、現在はむしろ中国主導になりつつある。 これには各国のTPPへの参加問題も絡んでいる。 たとえばニュージーランドはすでに米国主導のTPP交渉に参加しているが、今後は並行してRCEPの交渉にも参加し、米国主導の動きと中国主導の動きの両方に賭けている。 インドや豪州は、ドル過剰発行の加速による将来のアメリカ経済の破綻を見据えて、中国との協調関係を強めている。 また、韓国やASEAN、NZは、中国と米国の両方に賭けてどっちに転んでも良いようにしている。
 そもそも日本では、なぜかTPPばかりが喧伝されている。 米国主導で中国排除のTPPに入るがどうかかが来月の衆議院総選挙の争点になっている半面で、日中韓FTAはあまり報じられず、日本主導のはずだったアールセップRCEPについては極端にマスコミ報道が少ない。 日本政府が中国を牽制する国際経済戦略としてRCEPを本気で主導するつもりなら、それは戦略のあるポジティブな動きと言えるが、実際のところは日本政府は何もしていない。 中国の台頭に対して戦略的自立的な動きをほとんどせず、単に日米同盟を強めるためのTPPに嫌々参加する姿勢に終始していることは、日本は国際的に情けない状況と言わざるを得ない。


 将来の世界経済の要点は、 
 1.アメリカの「財政の崖」や連銀のQE3によって、米国債をいつまで買い支えられるかということ、 →米国債買い支えがだんだん困難になってきている状況。
 2.中国の米国債不買によって、米国債が急落するのでないかということ、 →米国は中国にとっても大事なお客様だから極端な不買には至らないはず。
 3.米英の金融投機筋攻撃でユーロ危機が起きたように、米国が中国の経済発展を金融政策で壊すつもりがあるかどうか、 →米国にとっても中国は大事なお客様だから中国経済危機は起こせない。
 4.中国が政治的な失敗、すなわち中国の経済成長が急激にダウンしさらに貧富格差是正に失敗して、共産党支配体制が政治的に不安定化し混乱状態になる可能性がどれくらいあるか。 経済GDP成長を維持しなければ貧富格差是正もできず国民の不満が暴発しかねないことは、中国共産党幹部もよく理解しており細心の注意を払っているが、対応しきれなくなれば、今回のように反日運動によって国民の不満をそらせようとする可能性は高い。 →3年内に経済成長率が5%台に下がれば、中国政治は一気に不安定化する。
 5.習近平政権が軍部を抑えきれずに軍拡競争に猛進しないかということ。 西側との軍拡競争となれば、旧ソ連と同様に中国は経済負担に耐えきれずに破綻する可能性が高い。 →中国も旧ソ連の崩壊を学んでいるから極端な軍拡には走らないだろうが、経済不振による政治不安定化が起きれば軍部が暴走する可能性はある。

 実は、共産党幹部と組んで企業経営し大富豪となった実業家が中国では増えているが、彼らのうちで資産を海外に移したり家族が外国籍を取得している者が少なからず居ることが、中国では問題になっている。中国では、政変や暴動により一瞬にして全財産を失うばかりでなく、生命まで危うくなりかねないのが、その動機と言われている。 外国人どころか、中国人自身さえも自国の政治体制を危ぶんでいるのだ。 これほどの存亡を賭けた苛烈な経済競争のまっただ中に居ながら、対米一辺倒の日本は中国に対する経済戦略を立てる余裕さえ無い。
 日本は、日銀の金融緩和で米国のQE3を支援しており、米国が金融財政面から潰れれば日本も道連れであろう。逆に自由化されていく人民元が米国の金融システムから攻撃されて中国経済が潰れれば、日本は漁夫の利を得られると期待しているのかも知れない。 どちらにしても日本は主体的に道を選び取るのでなく、米国と中国の動きが、日本を含む東アジアの将来像を決めることになる。自立的な戦略を持ちたがらない日本は、世界で小さな影響しか持てなくなっている。
 百年に一度のグローバル転換期なのに自前の分析も戦略も持たず、彼らの考え方が正解かどうかは別にして、石原都知事や鳩山元首相、小沢氏のように何らかの対中国新戦略を打ち出した政治家を罵倒するだけの日本は情けない。

 もしも中国が経済破綻しないのならば、ASEAN+3+6東アジアFTAは、中国の台頭を広域的な経済利得に波及させる新覇権の仕組みとなる。 対照的に米国主導のTPPは、米国企業が利益を出せる構図を確保するもので、米国が失いつつある経済覇権を活用できるシステムを今のうちに作りあげようとしている印象がある。 オバマは今回プノンペンまできて東アジアサミットに出席し、再選直後のアジア歴訪で、いかにアジアを重視しているかを示しつつ、TPPをアジア諸国に売り込みにきた。これによりタイが新たにTPPの交渉に参加する姿勢をみせたが、アジア諸国は米国が参加しない「ASEAN+6(日中韓印豪NZ)」のRCEPの交渉開始のほうも決定し、アジア経済が中国主導になる可能性を示して見せた。

 米国が中国抜きのTPPを進めるほどに、中国は対抗して米国抜きのASEAN+3+6を進める。 米国の意図とは逆に、TPPは東アジアを米国中心から中国中心に転換させるベクトルになっている。 ASEAN+3+6は、現存のASEANの自由貿易圏を拡大するだけなので実行しやすい。 しかし、TPPは米国主導でゼロから仕組みを組み立てる交渉であり、実現までのハードルが高い。すなわちTPPは、米企業の利益を優先して他の参加国の政治主権を損なう構図のために日本を含む各国で反対が強い。
 障壁の高いTPP協定締結は実現せず、東アジアに中国中心・米国抜きのRCEPアールセップFTAを誘発したのみで終わってしまう可能性もあるが、しかし日本がTPPに参加せず日米軍事同盟(対中国包囲網)を保てるとは私には思えないから、結局日本のTPP参加は必然だ。 一方でRCEPのほうも、第1回会合はTPPを横目に見ながら2013年5月頃ブルネイで開催される。中国も、RCEPで日本外しなど言っておれる状況ではない。 日本は、久しぶりの両手に花のモテモテ状態を満喫できるだろう。
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 ★★★さて、日本企業として中国とどのようにつきあうべきか★★★

 日本企業にとって中国の事業環境は変質した。 今こそ新しい現実に向き合い、一歩踏み出す勇気が問われている。
 中国事業をどうすべきか。1990年代半ばから中国に大挙、進出した日本企業は2012年、きわめて重大な岐路にさしかかり、中国事業に関する決断を迫られている。今回の「反日」はデモから破壊行為、不買運動に発展し、日本企業が直接的な被害を受けただけでなく、中国の国民を長期的に縛りかねない日本企業嫌い、日本製品忌避の感情を残した。
 直接的な原因となった尖閣諸島国有化の現実は今後も続くわけで、日本企業は中国での生産、販売でこれからも大きな反日リスクを抱え続ける。さらに、日本国民やビジネスマンの中国嫌悪感の高まりは根深いものがある。 中国事業に意欲と熱意を持ち、日中友好を願っていた日本のビジネスマンの多くは激しい日本たたきの現実に自らが立っていた基盤の崩壊を経験した。日本企業の対中ビジネスはもはや元には戻らない変化を遂げた。

 重要なのは中国の経済、市場そのものも今、大きな転換点にあることだ。人件費の高騰、人民元の上昇、自動車、家電や鉄鋼など様々な商品が示す需要の飽和化であり、一言でいえば「高度成長期の終わり」である。中国を世界第2位の経済大国に押し上げたトウ小平氏の「改革開放」政策の発動から34年経つ。中国の1人当たり国内総生産(GDP)は5400ドルに達し、「中進国」となった以上、高成長期にピリオドが打たれるのは自然なことだ。
 ただ、中国経済に次のステージは用意されていない。成長の道半ばで先が見えなくなった焦燥感こそ「反日」のエネルギーだったのかもしれない。中国も本心では、戦略なく尖閣反日を日中経済関係にまで拡大してしまったのは失敗だったと考えているが、振り上げた拳の降ろしようをどうしたらよいかと戸惑っているのであろう。

 では、これから日本企業は中国にどう向き合うべきか。 まず、考えるべきは中国経済の変質である。90年代から中国の成長をけん引してきた輸出型の生産はすでにかなりの分野で競争力を失っており、ここ数年進んでいた東南アジア、南アジアへの工場流出はさらに加速するだろう。
 この10年、中国の新たなビジネスチャンスとして日本企業を潤してきた中国の内需は成長鈍化に直面するだろうが、今後も重要性は変わらず、日本企業にとっては欠かせない成長の原動力だ。中国国内の内需向けの生産拠点も重要性はあまり薄れないだろう。 まとめていえば、こうなる。中国は「世界の工場」から「中国の工場」になる。 内需で成長する米国と同様に、中国も内需で国内に立地する工場を食べさせていけるようにする施策を推進するだろう。


「日本企業は中国で目立たないようにしよう」
 日本食レストランの一部では、破壊行為の標的にならないようにするため、看板から「日本」の文字が消された それを踏まえれば、日本企業の戦略は、輸出型生産拠点の中国からの脱出、中国内需向け生産拠点の維持と中国国内販売の強化だろう。だが、中国のなかに工場を残し、販売を強化するのは簡単ではない。いつまた「反日」の標的にされるかはわからない。
 「反日」回避のひとつの戦略はグローバル化、さらには無国籍化だ。どこの国の企業かわからなくなれば「反日」には巻き込まれにくい。そういう企業は少なくない。スイス発祥の食品大手、ネスレをスイス企業と知る中国人は少ないが、ネスレ商品は中国のスーパーの棚で大きなスペースを占めている。フランスの化粧品メーカーのロレアル、英蘭系日用品メーカーのユニリーバ、ドイツのアディダスなど中国市場で国籍をあまり認識されずに売れている商品は多い。日本企業も無国籍化がひとつの選択肢となる。

 一方、迂回する方法もある。日本から中国に投資するのではなく、日本以外の国に設立した現地法人から中国に投資、進出する迂回戦略だ。台湾、シンガポール、マレーシアなどの現地法人を対中投資のプラットホーム化するわけだ。もともとは日本企業であってもシンガポールの法人が投資すればシンガポール企業として活動できる。
 中国では、かつて江蘇省あたりで多くの民営企業が国有企業待遇を得るため、実質的に破綻した国有企業を買収するなどして、国有企業を装い、これを「紅い帽子をかぶる」と呼んでいた。日本は今後、東南アジア諸国連合(ASEAN)企業の帽子をかぶり、ASEANで製品を生産し、中国とASEANの自由貿易協定(FTA)を活用して、低い関税で中国市場に商品を輸出するという道もある。
 さらにすでに一部の企業は1990年代から行っているが、米国企業を買い取り、米国法人から対中投資をし、米国企業の待遇で企業活動する方法がある。自国企業と従業員を守ることを米国ほど重視し、その実力もある国はほかにない。言葉は悪いが、どの国も無視できない米国を用心棒とするのである。

 上記の方法をとっても、日本国内の雇用を守られるとは限らない。いずれの方法も、中国以外の外国に工場進出しなければならないからである。しかし、人口オーナスどころか2050年に1億人を切ると言われている日本で今後のGDPが伸びるはずがない。消費市場としても縮小し、日本はその他ひとからげの国になって行くのを止めることは誰もできない。
 うまく行けば、海外工場進出しても製品の重要部品製造工場は日本国内に残せるかも知れない。実は、今度の反日デモのあとでもスマートフォン部品のように代替できない重要部品に関しては、地方政府高官や中国国営企業幹部がお忍びで日本の本社にやってきて、是非とも今後も部品供給を続けてほしいと頼みに来たという話はよく聞く。さらに他国が発売できていないデジタルカメラなどは、日本製品と分かっていても売り上げが落ちていないと聞く。 要は、他が代替できない製品を開発すれば、反日であろうが何であろうが買ってくれると言う、当たり前のことだ。

 日本国内に工場を残すことに関して、あと一つ書いておきたい。 電力会社が原発停止で化石燃料輸入費用が増えたために2013年度から電気料金を大幅値上げ申請するという。原発稼働が遅れれば、さらなる値上げ申請をするらしい。それほど原発稼働させたいのであれば、再稼働の際には、原発から20キロメートル圏は電気代8割引、50キロメートル圏は半額、80キロメートル圏は2割引にして、そこにどんどん日本中から工場誘致をして貰いたいものだ。  -以上-
2012年11月27日
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