世界の主要国首脳交代で2013年3月から国際政治が動き始める。やはり一番の懸念材料は中国の動向。
 世界主要国の首脳交代が終了し、実質的な新体制に向けての政治指導がスタートした。イスラム・イスラエル問題、中東問題、アフガン情勢、イランと北朝鮮の核ミサイル問題など、国際政治の課題は満載である。 安倍首相も訪米して日米首脳会談を行う予定であるが、もっとも日本が懸念しているのが尖閣領有権に絡む中国の政治・経済的動向である。
 中国というと、WTOに参加して以来成長を続けて、グローバル自由貿易で莫大な利潤をあげて2012年にはGDP世界2位の大国になったが、最近は国際政治や軍事面でも主張を強め過ぎたため、周辺各国と海洋資源や領海についての摩擦を引き起こしている。 そうこうしているうちに、中国パワーの源泉である世界自由貿易による経済成長にも陰りが見えてきた。 中国の経済成長率は2012年に8%を切り、労働人口の人口ボーナス時期も近く消滅する。
 中国製の太陽光パネルやレアアースそのほかについてのWTO違反が指摘され、他国への先端産業や国防組織へのサイバーテロ疑惑や、中国ITメーカーが製造した携帯電話やパソコンにはスパイウィルスが仕込まれているなどの疑惑さえも浮上してきた。
 これらの疑惑が全て真実であるなどとは誰も言わないだろう。 しかし自由貿易を享受したいのならば、国際ルールから逸脱しているのではと疑惑を持たれるような振る舞いは避けたほうが、中国自身の今後の経済発展のためにも良いのではないか。 大国らしい振る舞いとは、そういうことである。


そんな中で尖閣諸島の海底石油資源にも関連する、私にとって気になるニュースがあった。
 米政府が2013年2月12日、中国海洋石油(CNOOC)によるカナダ石油大手ネクセンの買収を認可したとの報道があった。ネクセンが権益を保有するカナダと英国の両政府も承認済みで、論議を呼んだCNOOCのネクセン買収がほぼ確定し、中国は中国に膨大な資源があるシェールガス採掘技術と深海石油採掘技術を獲得することになったとしている。
 中国が周辺国と摩擦を起こしているのは化石資源の争奪戦の側面が大きいが、中国には実は埋蔵量世界一のシェールオイル・ガスが存在しているとされている。この莫大なシェールガスの採掘技術を中国はまだ持っていない。また南シナ海や東シナ海の深海石油掘削技術も不十分だ。その意味では、ネクセン買収は中国政府にとってはのどから手が出るほどほしい技術を手に入れることに繋がる。
 
しかしこのネクセン買収劇はまだ微妙な段階にあると私は考える。 なぜならば、中国はもはや国際経済に深く組み込まれているにもかかわらず、軍事的には世界協調体制をとっていないのではないかとの懸念が米国にあるためだ。 南シナ海、東シナ海領有権問題での軍部の覇権行動に習近平政権も深く関与している事への疑念、サイバーテロに中国軍部が関与したとの調査報告書も後述するようにこの時期に米国で公開された。さらに北朝鮮の米国到達可能な長距離核ミサイル開発への真摯な抑止行動を中国がとっているのかとの疑念も米国にはあり、中国の新政権を米国が試す動きが強まっているためだ。
 それはともあれ、中国第3位の石油会社であるCNOOCはオイルサンド会社の買収に注力し、中国によるカナダのオイルサンド産業進出の先駆的な役割を果たしてきた。CNOOCは2012年7月にネクセンを約151億ドル(約1兆4200億円)で買収すると発表したが、中国政府を後ろ盾とする国有企業のCNOOCによる資源権益拡大の動きに、カナダなど関係国で懸念が広がっていた。
 最後の関門となった米政府の外国投資委員会の認可を受け、ネクセンはCNOOCが月内に買収作業を完了すると発表した。これは中国企業による過去最大の合併買収となる。CNOOCはカナダ政府から求められた経営陣や雇用に関する条件を受け入れ、ネクセンの取締役会やマネジメント関連ポストのうち半数以上をカナダ人が占め、ネクセンの経営陣や従業員を全員引き続き雇用する。
 CNOOCは、この企業買収でオイルサンド資源の権益取得だけでなく、オイルサンド開発プロジェクトの経済性を向上させる水蒸気支援重力排油法の技術が得られることがネクセン買収の重要なプラス効果だと説明した。CNOOCは、ネクセンが保有するカナダ・アルバータ州のロングレーク・オイルサンド開発プロジェクトと関連技術を手に入れることができる。同プロジェクトはビチューメンの生産能力が日量7万2000バレルで、同処理能力が日量5万8500バレルである。CNOOCは、SAGD技術とともに、SAGDに必要な水蒸気をより少ない天然ガスの消費で生み出す技術も取得する。ネクセンはこの技術を持つカナダのオイルサンド開発会社OPTIを2012年に21億ドルで買収し、利用権を独占している。
 中国企業では、CNOOCのほかにも、中国石油天然ガス(ペトロチャイナ)、中国石油化工(シノペック)などがこれまでに180億ドルを投じてカナダのオイルサンド資産を買収しているが、その大半はプロジェクトを運営する企業の買収ではなく、プロジェクトの少数利権の取得だった。

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 中国の人民解放軍が全世界の企業や公的機関に対してサイバー攻撃をしているとの調査結果を2013年2月19日に米国が発表した。中国政府はそれは濡れ衣であり、中国こそ米国からもっとも多くのハッカーサイバー攻撃を受けている被害国だと反発しているが、それにしても最近の中国政権は軍部の跳ねあがり行動をコントロールできていないのではないかとの批判も強い。
 そのサイバー攻撃の中核部隊と米国政府から名指しされた「61398部隊」の拠点は上海・浦東新区にある。61398部隊の軍施設正門前では、2月20日現在、軍部隊の車両が常時停車して厳戒態勢を敷き、外国メディア記者の取材や撮影を制止している。 また中国当局は取材に訪れた記者達を一時拘束し、デジカメのメモリーカードを没収した。
 この施設周辺はアパートが立ち並ぶ住宅街である。正門では部隊の名前を明示する看板を掲げておらず、塀で囲まれた敷地内は10階建て程度の高さのビル2棟と部隊員用と思われるアパート数棟が整然と並んでいた。 近所の住民は「軍施設とは知っているが、何をしているのか分からない。怖いのであまり近づかないようにしている」 と語る。「普通の軍隊らしさが感じられないが、その一方で警戒は異常に厳しい」と話す住民もいた。

 事の顛末を詳細に言うと、「中国軍との関係が取り沙汰される大規模なハッカーグループが、100社を超える米国企業のネットワークに侵入し、数百テラバイトものデータを盗み出した」 とする新たなリポートが米国時間2月19日に公開された。 マンディアントという米国のセキュリティ関連企業が公開したこのリポートは、全部で76ページにも及ぶものであった。同社はそのなかで、この大規模なサイバー攻撃への中国軍の関与に対し、正面から批判の声を上げている。 マンディアントのリポートによれば、「Comment Crew」または「APT1」と呼ばれるこのハッカーグループは、上海の浦東新区にある12階建てのビルを拠点に活動していることが特定されたが、このエリアには人民解放軍61398部隊の本部があり、同部隊の一部であるとも言われている。また、同部隊は数百人から数千人のハッカーを抱えており、このハッカーらをつかって2006年以降、国営企業のチャイナ・テレコムなどのリソースを利用しながら、多くの米国企業から貴重なデータを盗み出してきたと見られているという。
 「さまざまな分野の企業各社に対する大規模で継続的な攻撃が、中国の1つのハッカーグループから行われていることを考えると、APT1の背後には別の組織の影が浮かび上がる」 とマンディアントはリポートの中に記している。「われわれがこの文書で示した証拠を踏まえれば、APT1が61398部隊であるという主張に至る」。 マンディアントによれば、世界中の組織をターゲットに中国軍が行っている組織的なサイバースパイ活動やデータの窃盗行為などは、中国共産党の上級幹部が直接指揮するものだという。また、61398部隊はこういったサイバー攻撃を行うため、中国国内の大学の科学・工学関連の学部から積極的に新たな人材を引き入れているという。
 今回公表されたリポートの中には、このサイバー攻撃の被害にあった企業の一覧も記されており、そのなかにはセキュリティ企業のRSAやコカ・コーラ、重要なインフラシステムの部品メーカーなども含まれている。ターゲットになった分野はハイテク、宇宙、輸送、金融サービス、衛星、携帯通信、化学、エネルギー、メディア、広告、食料、農業まで多岐にわたっている。 「61398部隊がこのリポートを読んで攻撃の手口を変えれば、われわれはさらに慎重かつ熱心に彼らを追跡していく必要に迫られる」 とリポートにはある。 「ただ、このリポートが一時的にでも61398部隊のオペレーションコストを増やし、彼らの足止めになることをわれわれは切に願っている」 と結んでいる。
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---ところで、中国大使を退任した丹羽宇一郎さんの対中国の話を聞いてみたい---
彼は大使時代に経済界を重視して尖閣問題で譲歩したのではないかと、一部の日本人からは売国奴扱いもされたが、退任後の一般人としての立場からの意見には傾聴するところがあるかも知れない

(毎日新聞 2013年02月04日)
−−記者:沖縄県・尖閣諸島問題で、中国は「棚上げ論」を主張していますが、日本は「尖閣諸島に領土問題はない」との立場で、隔たりが大きいですね。
 ◆(丹羽さん) 政府の公式記録には「尖閣は棚上げする」という合意はありません。公式な立場で関係者が発言する場合、「棚上げ論はありません」と言うしかない。しかし、日本が「白」と言っているのに中国が「黒」と言っているのだから、外交上の係争があることは間違いありません。いくら日本が 「問題は存在しない」 と言っても、外国からみれば「何を言っているんだ」となるでしょう。 争いがあると言っても、日本の尖閣実効支配を否定するわけではありません。
 (コメント/本当にそうかな? そういう方便が外交上どういう意味を持つかについては、熟慮が必要と思います。 例えば米国は、日本が現在実効支配しているからこそ尖閣が中国に侵略されれば日米安保条約の発動対象になるが、領有権については日中の話し合いで決めてくれなどと微妙なことを云っています。 尖閣施政権、すなわち日本が実効支配していることが安保発動の要件なのです。 棚上げなどして実効支配状況に傷がはいると、そこから日米安保条約は動かなくなります。 そのあたりは中国は戦略的に認識していると思いますが・・・・)。 
(丹羽さん) ただ、係争をそのままにしておくのは良くない。 どちらの領土か、ということは話し合いでは解決しない。これは何百年たっても難しいでしょう。 しかし、お互いに争って一触即発の事態が起きてはいけない。日中関係は領土問題が全てではありません。

−−記者:話し合いで解決が難しいとしたら、どうしたらいいのでしょうか。
 ◆(丹羽さん) 「棚上げ」という言葉は非常に使い古された言葉なので、私は「第四の道」があると言っています。第一は国際司法に訴える、第二は島の売買、第三は戦争ですが、第四の道は「休む」ということです。 お互い頭を冷やし、大局的な視野で冷静に物事を考える時間が必要です。争っても良いことは一つもありません。平和にやれば両方にとって利益です。

−−記者:尖閣問題では、中国に進出している企業が店舗を壊されるなどの被害が出て、チャイナリスクが改めてクローズアップされました。
 ◆(丹羽さん) 一部の暴徒的な中国人たちの行動でしたが、世界中があの行為を見てしまいました。あんなことを繰り返していたら、海外から中国への投資は入ってきません。中国への経済投資が止まるわけです。日本だけじゃなく他の国も中国リスクを考えるでしょう。 中国のトップはそのことをよく分かっていると思います。これは中国側が正すべき問題です。
(コメント/私は、中国政府が反日をあおり日本企業への暴動を黙認した事が最大の問題点だと思っています。中国政治の経済への介入を中国リスクとして世界中の人たちが見てしまったわけです。 以前の民主党政権時代に鳩山元首相が米国と距離を置いて、「アジア友愛の海構想」で中国を日本側に引き込もうとしましたが、米国は反発し、中国政府も彼を馬鹿にしていましたね。 あのときに中国が「アジア友愛の海構想」に乗る振りでもしておけば、日本人はすっかりだまされて中国にとって大事な10年間の大経済帝国化の時を稼げたでしょうに。 今では能天気な中国大好き日本人は絶滅危惧種になりましたが、このことは中国政府にとっても重大な損失でしたね)。
 (丹羽さん) 私は、中国民衆の不満が高まると、「アラブの春」のように何かのきっかけで噴出することもあると思っています。 今回がそうだった、とは言いませんが、少くとも中国の一部の民衆はかなりの不満をため込んでいます。 人口の7-8%しか占めていない中国共産党が、14億弱の中国の民を支配できる理由は何でしょうか。 一つは、共産党が抗日戦争に勝ったから中国の独立を実現できたということでしょう。 しかし、戦争からいったい何年たったのでしょうか。現在では日本を訪れて日本人はやさしくて良いじゃないか、と思う中国人はたくさんいます。 もう一つは、急速な経済成長は共産党のおかげ、ということがあります。 しかし、豊かになれたのは一部だけで中国には貧困にあえぐ人が特に内陸部にたくさんいます。 中国共産党の統治体制の根幹にある理論的な根拠は何か。一部の中国知識人の間では、最近そういう話が出るようになってきました。(コメント/そういう人達は、裁判も無しで刑務所に入れられて思想矯正労働されているのではないのですか?)

−−記者:中国はもう日本の援助は不必要と言っています。
 ◆(丹羽さん) 日本人は、中国の個々人の経済が日本と同じようなレベルにあると思っているかもしれないが、とんでもないことです。 ひとりあたりのGDPは世界で90番目です。 つまり、中国は平等をモットーにする共産党国家でありながら、富豪がどんどん生まれると同時に子供を小学校にもやれない食うや食わずの人たちが内陸農村部にはまだたくさんいる、ということです。 猛烈な格差社会です。 平均的な中間層を増やさないと中国の内需も拡大しない。金持ちだけがお金をつかってもたかがしれています。(コメント/中国の方で日本の援助は不要と言っているんですが・・・? また、大金持ちの方が可処分所得が多いから、格差があったほうが海外向け購買力は大きいと思う。 それにしても中国は共産主義国家なんかではなくて、共産党特権貴族階級と、大都市戸籍の一級市民階級、そして貧困下層農民階級に分かれている貴族制階級国家そのものですね。 中国では、これらの生まれ育ちの階級から努力によって上位階級に昇進することができるのでしょうか? 一生身分が固定していたら、やはり何時かは革命が起きても仕方ありませんね)
 (丹羽さん) 個々人が日本のレベルに追いつくには、まだ10年も20年もかかるでしょう。
(コメント/中国のような国で革命無しに貧困格差をなくすことは非常に難しいと思いますが・・・。 文化大革命を再び起こさせないために、中国は抗日宣伝をして統一愛国教育をしているのでしょう? このままの体制で個々人を日本のレベルにもってゆくことは、無理なのではないでしょうか?)

−−記者:習近平総書記(国家副主席)になって、日中関係はどうなっていくでしょうか?
 ◆(丹羽さん) 習さんは、前総書記の胡錦濤さんと交代した昨年11月の共産党大会以前から対日政策に中心的に関わっていたことは間違いありません。彼自身は対日関係の重要さをよく分かっていると期待しています。(コメント/推測ですが、習さんは支持基盤が弱いので、人民解放軍のそれぞれの部署の跳ね上がり行動をコントロールしきれていないと思います。 人民解放軍は、むしろ日本と緊張状態にあった方が軍事予算が付きやすいと、張り切って抜け駆け挑発するでしょうし)
 (丹羽さん) 3月に開かれる中国の全人代(全国人民代表大会)で、習総書記が国家主席に就任するなどの中国の閣僚クラスの交代が決まります。 今いちばんの問題は、それまでは両国の首脳がそれぞれ自分の政治基盤強化のために、国内向けの威勢の良い発言をしていることです。 それをお互いの国民が、そのまま受け止めてはいけません。 報道規制のある中国はともかくとして、日本の国民はそこのところはよく分かっているのではないでしょうか。 
 顔をそむけ合っているのは日中両国にとってプラスではありません。 桜が咲く頃に、両国の話し合いができるようになるのではないでしょうか。
(コメント/私には、習さんが桜の咲く頃までに人民解放軍を支配できるようになるとは思えない。 そもそも、両首脳が会って尖閣はこちらのものと言い合って、会談の意味があるんでしょうか? 私は早くても首脳会談は11月以後だと思います。 その前に、軍事衝突防止のために防衛省と人民解放軍のトップ同士が会うことは必要でしょうが)
 (丹羽さん) 日本と中国は、仲良くやっていく以外の選択肢はないのです。
(コメント/ そうでしょうか? 中国国民とはともかく、今のままの中国政府とは仲良くしたくないが、両国の軍部幹部同士はホットライン等で密に連絡を取り合い、尖閣衝突しないよう努力しなければいけませんね。
 経団連のように、旧体質の産業界が中国依存を請い願っている姿は、日本人として見苦しい限りです。 2010年貿易統計では中国(香港含む)との貿易額は日本の貿易全体の25%を占めていますが、私はもはやこれ以上中国に貿易依存をしない方が両国にとって良いと考えています。 1つの国との貿易量が3割を超えて経済依存が強まると、政治的にも束縛される危険ラインに入ります。 最近の韓国の政治的中国擦り寄りが、その良い例です。
 日本は、香港を含む中国との直接貿易額を貿易額全体の2割以下に抑えるべきです。 その代わりと言っては何ですが、直接中国にではなく、ASEAN各国を通して中国への迂回貿易をすれば良いと思います。 それでも中国にどうしても進出して儲けたい企業は、もしも何かあっても国に泣きつかず、企業自身で中国リスクをとれと言いたいですね)
  -以上-

2013年2月21日
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