日本の原子力発電政策について
 原発問題について一言言っておきたい。 最近の安倍首相は脱原発依存を唱えながらも、取り巻き連中が原発依存に前のめりが過ぎるのではないかと皆が心配している。 経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会では脱原発メンバーを罷免交代させておきながら、「原発依存は減らすが、原子力規制委員会が世界一安全と認定した原子炉は再稼働させる。どれくらい原発を減らすかはまだ分からない」 なんて無責任に過ぎよう。 また、原子力規制委員会の規制は世界一だと言っているが、これは嘘っぱちだ。日本の規制法は、国際原子力機関IAEAの「原発施設安全のための5層保護条件」さえも満たしていない。 そういうことでは経済産業省など原子力村の受けは良いかも知れないが、脱原発依存を期待している国民にはそっぽを向かれてしまう。 かといって、情けないことに民主党も電力労連の支援でやっと当選できた議員が多いから原発議論は避けたいだろう。 しかしこれは日本の将来を決める問題だ。

 
なお、日本では原発停止後に天然ガスLNGを年間9千万トンも輸入しており、貿易赤字が大変だと騒ぐ人たちがいる。 原発1基が再稼働すれば輸入量を50万トン減らせるが、9千万トン輸入を無しにするのならば200基近く原発を稼働させなくてはならない。 日本では原発30基を再稼働して、9千万トンのLNG輸入量を17%減らすのがやっとであり、それでは日本の貿易赤字の根本的解決にはほど遠い。 原発停止でLNG輸入量が増えて大変だと言う説は、相当に誇張気味である。 輸入額増大の原因は原発停止ではなく、国際価格高騰と円安だ。

 3年後2016年には原発依存率15%くらいに低下させ、2050年には5%以下
(各電力会社1基として新規原発10基建設されるならば5%)にすると、安倍総理は国民に対してはっきり言えばよいのだ。 それが政治的にも妥当な線というものだ。 私は原発を即時ゼロにして経済をハードランディングさせろなどとは言わない。 しかしながら、もう政府は2013年のうちに原発依存度の目標を決めて、その数値目標を国民に提示した方がよい。 今のままだと、安倍内閣では原子力規制委員会に圧力をかけながら原発を次々に再稼働し、さらに原子炉新設計画もズルズルと無制限に認可することになりそうだ。
 
これまで言われていた原発の安全神話と同様に、原発は安価だという信仰も全くの嘘だった。 
2年前に内閣府が原発コストを試算した時点では、8・9円以上/1kwhだったが、そのとき5兆円と見積もっていた放射能除去・賠償費用は2013年度ですでに11兆円を突破し、最終的には15兆円程度になりそうだ。これだけでも原発コストは10円/kwhにアップする。さらに福島事故以後の米仏での原発建設費用は、安全対策や地元対策のコストアップで従来の2倍にアップしており、廃炉費用も考慮に入れると原発コストは11円/kwhよりも相当高くなると見積もられる。 すなわち新しく発電所を建設すると、原発発電コストは11円以上/kwh、それに対して新鋭の石炭やガス火力発電は10円/kwhであることがもうはっきりしてきており、原発のコストは実際には高いのだ。 折も折、2014年に米国のシンクタンクが、「原発の発電コストは世界的平均で1キロワット時当たり平均14セント(約15円)で、太陽光発電とほぼ同レベルであり、陸上風力発電や高効率天然ガス発電の8・2セント(約9円)に比べてかなり高い」 との試算を出した。 エネルギー問題の米国企業系シンクタンク「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」が2014年9月16日にまとめたものだ。  東京電力福島第1原発事故後の安全規制強化もあって、建設費や維持管理にかかる人件費などが世界的に高騰していることが主な理由であるとしている。 このことは、やはり原子力の経済優位性が薄れていることを強く印象付けた。 http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014091601001012.html

 もっとも、電力会社が原発事故賠償保険積立金の相当部分を国に負担させるつもりなら、原発発電コストは安くなるかも知れないが・・・。 このように高コストなのに営利企業の電力会社が新規に原発を作りたいはずがない。 電力会社は莫大な設備投資のもとを取るために既に建設してしまった原発については再稼働をしたいだけだ。 新規原発を作りたいのは政府なのだから
(政府が新規原発を作りたい理由は、石油・天然ガス購入費削減、核兵器製造ポテンシャル保持、原発建設業界の活力維持、二酸化炭素削減国際公約などだろう)、どうしても新規原発を作りたいのなら国営で原発を建設してもらうしかない。 まさか、政府は原発電気料金を高く設定して電力会社を支援するから、電力会社は新規原発を頑張って作れ、なんてことにならないようにして欲しいものだ。

 
私の予測では、2010年50基だった原子炉のうち、2016年度までに再稼働できる原発は最大見積もっても35基程度に過ぎない。 日本の全発電量に占める原発の割合は2010年は25%だったが、2011年の原発事故でほぼゼロとなった後は、2017年になっても17%まで回復するのがやっとだ。 また原発には40年という寿命がある(これもなし崩しに60年に寿命延長しそうな雰囲気もあるが・・・・)ので、17年後の
2030年時点での稼働原発は最大で
20基であり、そうなると原発割合は10%以下でしかない。 2040年時点では稼働40年未満の原子炉は最大で7基すなわち原発依存度は3%程度でしかなくなっている。さらに言うと、2050年時点では原発新設がなければ当然ゼロになり、例え国営原発が今後10基新設されたとしても原発が全電力に占める割合は5%だ。 これは誰が計算してもそういう結果になる。
 このことは、
新規原発建設が無く、原発寿命が40年ならば、稼働原発は自動的に 2010年:50基25%→2016年:35基17%→2030年:20基10%→2040年:7基3%→2050年:0基0% になるということだ。 2030年代末すなわち2040年には原発は最大に見積もっても7基しかないはずで、原発依存度は3%という計算になる

 原発割合5%以下では、「日本も原発持っていますよ」と言う程度であって、とても原発依存などと言えたものではなかろう。 パブリックコメントの結果を見ても脱原発依存の声は大きいはずだ。 安倍首相はこの現実を見据えて、「40年後の原発依存度は極力小さくする」、くらいのことはもう国民に向かってはっきり言わなければならない時期だ。 
しかし安倍内閣は、経済産業省をはじめとする原発利権派の意向を受けて、新規原発を今後もどんどん作ろうとか、原発寿命を40年から60年に水増ししよう、などと考えているのではないかと疑ってしまう。 「原発は基盤となる重要なベース電源」との表現を盛り込もうとする経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会答申案には笑うしかないが、これをそのまま安倍内閣が閣議決定しようとしているところに私はうさんくささを感じる。
 新規原発をどれだけ作るのか、原発寿命は本当に40年なのかを、ごまかさず先延ばしにせずに国民にはっきり表明して欲しいものだ。
 
新規原発をバンバン作らず、原発寿命を60年に延長しなければ、日本では原発が重要な基幹エネルギーには成り得ないことは明白だ。 もしも安倍政権が原発は危険だが経済成長のための必要悪として重要な基幹エネルギーに位置付けるのであれば、安倍首相は国民に対してその旨を説明して目標とするエネルギーベストミックスを示すべきだ。
 日本の将来を左右するエネルギー問題についての、
「さしあたり大間と島根3号機以外については新規原発建設は考えられない」 などと発言する安倍政権のあいまい戦略は私は支持しない。 
廃炉リプレース原発は新規原発建設の例外なのかどうか、また原発寿命を厳密に40年とするのか、をはっきりさせないと、安倍政権のあいまい原発戦略に対する国民の疑問はふくらむばかりだ。

-以上−
2013年11月18日
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