食品の機能性評価モデル事業の結果を消費者庁が2012年4月25日に発表。DHAやEPA,ラクトフェリン,グルコサミンなど機能性成分11種類の健康効能評価結果を公表。食品機能性成分評価方法の試みとして実施したが、今回の11種類で機能評価は打ち切り。

「平成24年4月25日/食品の機能性評価モデル事業の結果報告の概要」

消費者庁では、平成23年度委託事業として、「食品の機能性評価モデル事業」を実施し、その結果報告を公表した。
 「食品の機能性評価モデル事業」は、「『健康食品の表示に関する検討会』論点整理」(平成22年8月公表)において、「消費者庁において早急に対応すべき方策」の1つとして、「新たな成分に係る保健の機能の表示を認める可能性について研究すべき」旨が挙げられたことを踏まえたもの。
 本事業は平成23年度事業として実施され、公益財団法人日本健康・栄養食品協会が受託した。主に以下の3つの事項について、調査・検討を行い、その評価結果をここに公表する。
1.諸外国等における健康強調表示制度の実態調査
2.食品成分の機能性評価に係る評価基準等の検討
3.食品成分の機能性評価に係る課題等の整理
 消費者庁は、本事業の結果を踏まえ、食品の機能性評価に係る主要な観点や研究開発に当たり対応すべき課題について、関係事業者等に広く周知を行うとともに、本事業でモデル的に策定した機能性評価方法等を食品表示制度に活用する方策について検討することとしている。

   *発表の詳細については、正確を期するために消費者庁ホームページ
                                   http://www.caa.go.jp/foods/index17.html#m01 をお読みください。
   *内容解説には健康情報ニュース http://ib-kenko.jp/2012/04/post_834_0425_dm1217_1.html
 も。

「個々の成分の評価結果」
 評価パネル会議で審議・承認された作業手順及び評価基準(2.2 に記載)を検証する目的で、2.3.1 から2.3.11 に示すとおり、この作業手順及び評価基準に基づき11 成分の機能を評価した。併せて、各成分の有害事象報告について、評価対象論文より情報収集を行った。
 なお、当該評価結果は、RCT を中心とした論文を調査して得られた科学的根拠に基づく「成分」についての評価であり、個別の「製品」についての評価ではないことに注意。 
 また、この11 成分については、本モデル事業において、実際の食品成分による検証を実施するために消費者庁が選定した成分及び受託事業者において追加した1成分であり、その成分の選定の考え方及び11 成分の一覧は以下のとおりである。

【成分選定の考え方】
 諸外国において機能性が公的に評価されている成分、または健康食品市場にいて市場規模が大きい成分のうち、一定のエビデンスを有することが見込まれるものから選定した。
 【選定された11 成分】  ・セレン  ・n(オメガ)-3系脂肪酸  ・ルテイン  ・コエンザイムQ10  ・ ヒアルロン酸  ・ブルーベリー(ビルベリー)エキス  ・グルコサミン ・分枝鎖アミノ酸(BCAA)  ・イチョウ葉エキス ・ノコギリヤシ、それ以外に ・ ラクトフェリン(受託事業者選定成分)。



−−−−−−−−−−−−個々の成分評価結果の概要−−−−−−−−−−−−−−−

セレン
 セレンは自然界に広く存在する元素。微量レベルであれば人体にとって必須であり、抗酸化作用(抗酸化酵素の合成に必要)があるが、必要レベルの倍程度以上で毒性があり摂取し過ぎると危険。

2.3.1.1. 評価対象とした機能
 機能性評価対象としては、「癌の予防効果」について、23 種の癌疾患別に調査を行った。また、免疫、抗酸化機能がいわれているが、これらは作用機序であり、機能とするには広範な疾患を対象として評価する必要があることから今回は取り上げなかった。
 一方、海外では、古くから癌発症抑制に関する研究がされており、米国FDA は特定の癌疾患に関してセレンの限定的健康強調表示を認めている。ここでは、23 種の癌疾患のうち、論文数、質、研究のタイプ等の観点から、前立腺癌、膀胱癌、食道癌、原発性肝癌の予防効果について検討した。

★セレンの機能性の評価結果
             総合評価  研究の質と数  研究の一貫性
前立腺癌の予防効果    B        A        B
膀胱癌の予防効果      D        C        C
食道癌の予防効果      D        C        C
原発性肝癌の予防効果  D        C        C

「前立腺癌の予防効果」に関しては、総合評価はB とした。「膀胱癌の予防効果」に関しては、肯定的論文はコホート研究であり、症例対照研究の論文は否定的であることから、根拠不足であると判断し、総合評価はD とした。「食道癌の予防効果」については、否定的なメタアナリシスがあること、肯定的論文はコホート研究であることから一貫性が低いと判断し、総合評価をD とした。「原発性肝癌の予防効果」については、否定的なメタアナリシスがあること、肯定的なRCT 論文の質が低く、他の肯定的論文も症例対照研究であることから、一貫性が低いと判断し、総合評価をD とした。
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n(オメガ)-3系脂肪酸
 n−3系脂肪酸は多価不飽和脂肪酸の一種。α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン(DPA)酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)などがある。EPA、DHAは白身、赤身の魚よりも青い魚の油に多く含まれ、EPAは養殖ハマチ、イワシ、マグロ(トロ)、サバに多く含まれる。DHAはマグロ(トロ)、養殖マダイ、ブリ、サバ、養殖ハマチの順に多い。 魚の脂肪は酸化されやすいので鮮度の高いものを選ぶこと、またEPA、DHAを多く含む魚の油を取れるように、鍋やムニエルなどの調理方法が適する。

2.3.2.1. 評価対象とした機能
 特定保健用食品や国内外のサプリメントで注目されている機能として、「心血管疾患リスク低減」、「血中中性脂肪低下作用」、「血圧改善作用」について評価した。 また、粉ミルクにドコサヘキサエン酸(DHA)が添加され、消費者の認知が高いと考えられていることから、「乳児の成育、行動・視覚発達補助」について評価した。さらに、特にエビデンスが充実していると思われる「関節リウマチ症状緩和」、「うつ症状の緩和と発生率低下」についても評価の対象とした。

★n-3系脂肪酸の機能性の評価結果
                      総合評価  研究の質と数  研究の一貫性
心血管疾患リスク低減(EPA/DHA)   A        A        A
血中中性脂肪低下作用(EPA/DHA)  A        A        A
血圧改善作用 (EPA/DHA)        C        A        C
関節リウマチ症状緩和(EPA/DHA)   A        A        A
乳児の成育、行動・視覚発達補助
   (EPA/DHA)              B        A        A
うつ症状の緩和と発生率低下
   (EPA/DHA)              C        A        C
心血管疾患リスク低減
   (α リノレン酸)            B        A        C

 EPA/DHA の「心血管疾患リスク低減」「血中中性脂肪低下作用」「関節リウマチ症状緩和」に関しては、いずれの機能も総合評価は、A とした。「血圧改善作用」に関しては、最近発表されたメタアナリシスで否定的、そのほかにも否定的論文があり、一貫性が低いと評価し、総合評価はC とした。「乳児の成育、行動・視覚発達補助」に関しては、乳児の成育と妊婦での試験結果を併せて評価することは難しいとの指摘があり、最新の否定的論文があることから一貫性が低いと評価し、総合評価はB とした。「うつ症状の緩和と発生率低下」及びαリノレン酸の「心血管疾患リスク低減」に関しては、それぞれの総合評価はC 及びB とした。
 今回の論文調査の結果から、有害事象としては、EPA/DHA において、軽度の消化器症状等が見られたが、重篤な有害事象は見られなかった。αリノレン酸では、アディポネクチン濃度と腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor Alpha:TNF-α)濃度の上昇、口の乾燥、排便習慣の変化、消化不良が見られ、脱落例で併発性疾患が6例見られたが、重篤な有害事象は見られなかった。
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ルテイン
 カロチノイド(植物の色素成分)の1種であるルテインは、体内に吸収されるとそのほとんどが目の網膜と水晶体に蓄積される。目に蓄積されたルテインは、活性酸素の発生原因となる紫外線や青色可視光線を吸収し、また、強い抗酸化力を発揮して水晶体や網膜の酸化を抑制。ルテインは緑黄色野菜に多く含まれ、特に多いのがホウレンソウとケール。

2.3.3.1. 評価対象とした機能
 ルテインの機能としては歴史的にも眼の健康機能が広く知られている。市販のルテインサプリメントの利用目的は、加齢黄斑変性と白内障に関する機能に集中しているため、今回はこの2機能について評価した。

★ルテインの機能性の評価結果
                   総合評価 研究の質と数 研究の一貫性
加齢黄斑変性の進行抑制      B        A        A
白内障の予防効果          D        B・C       C

「加齢黄斑変性の進行抑制」に関しては、予防効果と治療効果を扱った報告が混在しており、また、メタアナリシスで肯定的な論文がないことから一貫性が低いと評価し、総合評価はB とした。「白内障の予防効果」に関しては、試験数が少なく、さらに、n 数の少ない試験があり、研究のタイプ、質、数が低いとの判断から、総合評価はD とした。また、今回の論文調査の結果から、有害事象について、ルテインが原因と推定される報告はなかった。
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コエンザイムQ10
 コエンザイムQ10は肉類や魚介類などの食品に含まれている脂溶性の物質で、ヒト体内でも少量合成される。生物界に広汎に存在するキノン構造を有する物質であることから、ユビキノン (ubiquinone) とも呼ばれる「ビタミン様物質」である。

2.3.4.1. 評価対象とした機能
 コエンザイムQ10 は細胞が正常に機能する上で不可欠なエネルギー産生や抗酸化系に関与する生体内物質であり、多岐に渡り、多くの基礎及び臨床研究が実施されている。特に、心血管系機能関連の研究が多いこと、米国FDA が健康強調表示を認めている12 種類の食品(成分)のうち、6種類が心血管系機能(冠状動脈心疾患、高血圧症)であることから、心機能改善効果と高血圧症の血圧改善を最優先して取り上げた。
 また、その欠乏状態は健康への影響が大きく、その原因の代表的なものが、脂質異常症患者におけるスタチン系薬剤の使用によるものであり、スタチンによるコエンザイムQ10 欠乏状態を取り上げた。

★コエンザイムQ10の機能性の評価結果
                 総合評価 研究の質と数 研究の一貫性
心機能改善効果          B       A       B
高血圧症の血圧改善       C       A       C
スタチンによるコエンザイム
 Q10欠乏状態の改善      B       B       B

 総合評価は、心機能改善効果はB、高血圧症の血圧改善はC、スタチンによるコエンザイムQ10 欠乏状態の改善はB とした。 今回の論文調査の結果から、有害事象については、重大なものは報告されていない。Singh ら(1999)の試験では、胃腸系の有害事象がコエンザイムQ10 群の37%に観察されたが、プラセボ群の21%と統計的に有意な差はなかった。また、Burkeら(2001)の試験では、48 人中2人が吐き気又は鼓腸、1人が頭痛を呈した。
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ヒアルロン酸
グルコサミンとグルクロン酸からなるムコ多糖類の一種であり、鶏冠(とさか)臍帯などに多く含まれるが、最近では乳酸菌や連鎖球菌により大量生産されている。

2.3.5.1. 評価対象とした機能
 ヒアルロン酸で研究されている機能性は、膝関節痛改善作用、皮膚水分量の増加作用、角膜創傷の治癒作用、口腔乾燥症(ドライマウス)等、全身の広範な機能に及んでいる。 近年、日本国内外での経口サプリメントの利用目的は、膝関節や乾燥肌に悩む消費者を対象に、「膝関節痛の改善」と「皮膚の保湿」が大きく占めている。一方、韓国ではヘルスクレームとして、「皮膚の保湿」が認可されている。 このため、今回はヒアルロン酸の機能性評価として、「膝関節痛改善効果」と「皮膚の保湿効果」を選定した。

★ヒアルロン酸の機能性の評価結果
             総合評価 研究の質と数 研究の一貫性
膝関節痛改善効果     C       B       B
皮膚の保湿効果      C       B       B

「膝関節痛改善効果」に関しては、論文数が少なく研究者が限られている、ヒト介入試験による効果が限定的ないしは否定的であるとして、総合評価はC とした。「皮膚の保湿効果」に関しては、研究者が限られており十分に検証されているとは言い難い、作用機序の説明がないこと等により、総合評価はC とした。今回の論文調査の結果から、有害事象については、ヒトを対象とした論文、合計10 報中3報において詳細な記述がなされていたが、重篤な有害事象はなかった。
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ビルベリーエキス
 ビルベリーは、北欧に自生する野生種のブルーベリー。ポリフェノールの一種アントシアニンの含有量が多い。ビルベリーは一般のブルーベリーと比べて約3〜5倍ものアントシアニンを含有。

2.3.6.1. 評価対象とした機能
 今回は、特に毛細血管系の改善が主因と考えられる視機能改善(視力回復、眼精疲労改善)及び血流改善に注目して機能性評価を行った。これは、日本では、ビルベリーエキスを利用する消費者は、視機能改善や血流改善を期待していると思われるためである。 なおビルベリーは、日本で栽培され生の果実またはジャムとして売られているブルーベリーとは異なり、アントシアニン含量が高いミルテイルス節に属する。 健康食品で流通しているブルーベリーをうたっている商品のほとんどが、規格化されたビルベリーエキス(アントシアニン36%、アントシアニジン25%)を使用しており、海外で販売されている医薬品も同規格のビルベリーエキスを使用していることから、本モデル事業の対象としては、ブルーベリーではなく、ビルベリーエキスに絞り込んだ評価を行った。

★ビルベリーエキスの機能性の評価結果
                総合評価 研究の質と数 研究の一貫性
視機能改善(視力回復、
  眼精疲労改善)      C        C       B
血流改善             D        C       B

「視機能改善」に関しては、根拠となる論文が少なく、質も低いことから、総合評価はC とした。「血流改善」に関しては、肯定的論文が少ないことから、根拠不足として総合評価はD とした。 今回の論文調査の結果から、有害事象については、特に重篤な報告はなかったが、一部、吐き気、軽度の胃痛が見られた。
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グルコサミン
 甲殻類の殻や菌糸体の塩基性多糖類を加水分解した成分である。

2.3.7.1. 評価対象とした機能
 1990 年代後半に欧米や日本で関節疾患向けサプリメントとしてマーケットが広がり今日に至っている。このため、今回は変形性膝関節症の症状改善を評価した。

★グルコサミンの機能性の評価結果
             総合評価  研究の質と数 研究の一貫性
変形性膝関節症
 の症状改善        B        A        B

 肯定的論文は多いが否定的論文も見受けられ、一貫性が十分ではないと評価し、総合評価はB とした。
 今回の論文調査の結果から、有害事象については、変形性膝関節症患者にグルコサミン硫酸塩を1.5g/日、3年間投与した7つの臨床試験において、一過性の腹痛、下痢等の消化器症状が見られた。しかし、試験群とプラセボ群間で差はなく、両者における臨床検査値にも差は認められていないことから、グルコサミン投与による影響ではないと考えられている。その他、特に、重篤な報告はなかった。
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分枝鎖アミノ酸(BCAA)
 分枝のある脂肪族側鎖を有するアミノ酸である。タンパク構成アミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、バリンの3種の必須アミノ酸がある。

2.3.8.1. 評価対象とした機能
 今回は、食品として評価された論文の検索を行い、結果を分類することにより、筋タンパク質の合成促進・分解抑制、運動により生じる筋損傷・筋肉痛の軽減、運動による疲労の軽減の3機能を評価した。これらの機能は、BCAA が一般的に用いられているスポーツサプリメントにおいて、使用時に期待される効果と合致している。

★分枝鎖アミノ酸の機能性の評価結果
                 総合評価 研究の質と数 研究の一貫性
筋タンパク質の合成
 促進・分解抑制         B        A         A
運動により生じる筋損傷・
 筋肉痛の軽減          B        B         A
運動による疲労の軽減       C        B         C

「筋タンパク質の合成促進・分解抑制」に関しては、肯定的論文の2報は、経口摂取ではなく静脈投与であること、試験のn数が少ないとの指摘があり、総合評価はBとした。「運動により生じる筋損傷・筋肉痛の軽減」と「運動による疲労の軽減」に関しての総合評価は、それぞれB、C とした。
 今回の論文調査の結果から、有害事象については、感染症(BCAA、プラセボ群各1名)、足首ねんざ(BCAA 群1名)のため試験中止とした被験者について記述のある論文が1報あったが、BCAA 摂取が原因とは特定されていなかった。また、胃腸障害(1名)、背中に違和感(1名)のため、試験(運動中)を中止したと記述した論文が1報あったが、BCAA 摂取が原因とは特定されていなかった。その他の文献においては、有害事象に関する記述はなかった。
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イチョウ葉エキス
イチョウの葉から抽出したエキス。

2.3.9.1. 評価対象とした機能
 調査検証されている機能は非常に多岐にわたっており、今回全ての機能について調査するのは非常に困難であった。このため、今回は多様な疾患の改善に作用機序としても密接に関わりをもつ血流改善と、論文数が豊富でかつ消費者の期待が大きい認知機能改善の2機能を評価した。

★イチョウ葉エキスの機能性の評価結果
          総合評価  研究の質と数  研究の一貫性
血流改善        C        A        B
認知機能改善     B        A        B

「血流改善効果」に関し、2010 年発表の否定的メタアナリシス論文を重視して一貫性が低いと判断し、総合評価はCとした。 「認知機能改善」に関しては、総合評価はBとした。
 今回の論文調査の結果から、有害事象については、むかつき、胃腸障害、血尿、頭痛等が見られたが、イチョウ葉エキスに起因する重篤な有害事象はなかった。また、有害事象の発生率も低く、プラセボ群に比しても有意差はなかった。
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ノコギリヤシ
 ノコギリ椰子の果実や抽出したエキス

2.3.10.1.評価対象とした機能
 ヨーロッパでは軽度から中程度の良性前立腺肥大による排尿障害の改善薬とし古くから使用されており、ノコギリヤシ果実及びエキスの規格基準や利用法が確立している。我が国においても、いわゆる健康食品として1990 年代に販売が開始されて以来、前立腺領域の製品がなかったことや、高齢化による潜在需要の増大によりその認知度と普及が進んでいる。 こうした国内外の状況から、対象機能を「軽度から中程度の良性前立腺肥大にともなう頻尿、排尿障害の改善」とした。

★ノコギリヤシの機能性の評価結果
                 総合評価  研究の質と数  研究の一貫性
軽度から中程度の良性
 前立腺肥大にともなう
 頻尿、排尿障害の改善    B        A        B

「軽度から中程度の良性前立腺肥大にともなう頻尿、排尿障害の改善」に関しては、一貫性が弱いことから総合評価はB とした。
 今回の論文調査の結果から、有害事象については、因果関係の記載はなかったが、重篤なものとして、循環器疾患、外科手術、消化管出血、メラノーマ、急性尿閉塞、腹痛があった。 その他、胃腸障害の報告が多く、頭痛、高血圧、鼻炎、疲労感、無力感、尿路感染、膀胱炎、心悸亢進、低血圧、尿閉、関節痛、筋肉痛、PSA の上昇、陰茎違和感、光過敏症、めまい、グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(Glutamate Oxaloacetate Transaminase:GOT)値の上昇等の記載があった。
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ラクトフェリン
 母乳や牛乳などの乳や涙、唾液等、また、粘膜からの分泌液に含まれるタンパク質。熱に弱く、加熱殺菌した牛乳などの加熱した食品にはほとんど含まれない。

2.3.11.1.評価対象とした機能
 ラクトフェリン(Lactoferrin:LF)は母乳、特に初乳、涙や唾液等の外分泌液や血液に含まれることより、本来の機能は「感染防御」や「免疫調節機能の向上」と考えられるため、この2つの機能を評価した。 なお、免疫を介した作用は、外部の病原体に対しては「感染防御」に、それ以外については「免疫調節機能の向上」に分けた。また、近年、注目されている機能として「脂質代謝改善」についても評価した。

★ラクトフェリンの機能性の評価結果
             総合評価  研究の質と数  研究の一貫性
感染防御            B      A・B     B
免疫調節機能の向上     B      B       A
脂質代謝改善         D      B       B

 「感染防御」と「免疫調節機能の向上」に関しては、総合評価はそれぞれBとした。「脂質代謝改善」に関しては脂質代謝改善を示すデータが不明確であること、また、研究の歴史が浅いために否定的論文がないことは、効果の信頼性を高めるものではないと評価し、総合評価はD となった。 また、今回の論文調査の結果から、有害事象については、特に報告がなかった。

−−−−−−−−−以上、個別成分評価終わり−−−−−−−−−−−−−



--備考--
「機能性表示モデルの基本型(2.5.)」
 コーデックス委員会のガイドライン及び諸外国等の健康強調表示制度を参考に、科学的根拠に基づく表示モデルとして、栄養素機能表示型、構造/機能表示型及び疾病リスク低減表示型のそれぞれについて、「機能性表示モデルの基本型」及び各レベル共通の注意喚起表示を作成した。

「品質管理基準の作成及び国内製品の分析(2.6.)」
 機能性が評価された成分を用いた製品について、海外の品質規格基準との整合性に配慮しながら、一定の品質を確保するための「品質管理基準・規格基準」を評価対象成分毎に、モデル例として作成した。併せて、作成した品質管理基準案の含有量の分析方法の実効性を検証するために、国内製品分析を実施した結果、ほとんどの製品において、成分の含有量について、実測値は表示量の±20%程度となっていた。一方、腸溶性マイクロカプセル形態の製品について、今回作成した分析方法では抽出が困難であったなど、個別の成分や製品に特有の問題点も確認された。


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食品成分の機能性評価に係る課題等の整理
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 上記の評価基準等の検討過程においては、食品成分の機能性評価及び表示制度に係る様々な課題が抽出された。このため、今後の参考とすべく、評価パネル会議における審議過程において抽出された課題等について整理を行った。

<機能性評価方法に係る課題>(3.2.)
@ 公平性・透明性の確保について(3.2.1.)
@)利益相反(Conflict of Interest: COI)について
ヒトを対象とした研究については、研究の公正性・透明性を保つ観点からCOI関連情報の記載が望ましい。
 最近は、論文の投稿規程においてもCOI関連情報の明記を求めるものが主流になってきていることからも、今後発表される新しい論文においてはCOIについてより明確な判断が可能となるよう、COI関連情報の明記を徹底するなどの取組が望まれる。
A)文献検索・取捨選択の客観性、妥当性について
 出版バイアスについては、評価対象成分の機能について非常に限られた数の論文しか存在しない成分や、COI「あり」の論文が大半を占める成分がみられるなど、出版バイアスの可能性を明確に排除することは困難であった。
この点については、研究計画の事前登録により解決可能と考えられる。近年、臨床試験等研究計画の事前登録は国際的に定着しつつあり、主要な雑誌の投稿規定にも加えられていること、また、日本においても「UMIN臨床試験登録システム」などの運用が開始されていることから、今後、食品成分のヒト試験における事前登録の普及が望まれる。また機能性評価にあたっては、本モデル事業で行った電子データベースを中心とした論文検索に加えて、電子データベースに収載されていない論文やその他未発表データ等に対する網羅的検索(ハンドサーチ等)を行うことも、出版バイアスの排除には有効であると考えられる。
 エビデンスベースで機能性評価を適正に行うには、@)及びA)に述べたとおり、COI関連情報の吟味や出版バイアスの排除努力が特に必要となる。したがって、ヒトを対象とした研究で、少なくとも今後行われるものについては、研究計画について必ず事前登録を行うことや、研究計画及び論文の作成について国際的なコンセンサスの得られた指針(CONSORT声明等)に準拠することが必須であると考えられる。

A 評価対象機能について(3.2.2.)
@)評価対象機能の選定について
 消費者の認知している機能と評価可能な科学的根拠の間に差があるものにおいては、当該成分の機能に対して消費者に誤認を与えている可能性について、今後検討が必要であると考えられる。
また、身体の痛みの軽減など主観的な指標によってのみ評価可能な機能については、より客観性を保って評価するために、当該指標の妥当性の検証方法の検討が課題である。
A)評価対象の捉え方について
 病者を対象とする、あるいは、治療薬の補助的用途といった摂取条件を適用することは、食品の機能として適切ではないと考える。このため、機能性評価におけるこの種の研究の取扱いについては、今後検討が必要である。
B 評価基準について(3.2.3.)
@)総合評価の妥当性について
 「一貫性の目安」の評価については、一貫性の有無・程度の評価に係る客観的基準がないことから、今後、総合評価をより客観的・科学的に行うには、一貫性に係る判断基準についても検討・策定する必要があると考える。
また、古い論文については、当時の投稿規定に基づき論文投稿がなされていることから、現在の投稿規定では当然に求められている事項が記載されていないなど、本モデル事業において作成した「『研究の質』の評価採点表」では、適切に評価できないという課題が挙げられた。このため、新旧の論文を総合的に評価可能な評価基準の検討も課題と考える。
A)RCT以外の試験研究の取扱いについて
 食品成分の機能性評価は、RCT以外の試験研究も含めたtotality of evidenceを重視する考えもあることから、RCT以外のヒト介入試験、コホート研究等も重視した評価方法の検討も今後の課題と考える。
B)その他
 評価対象成分がエキスのように複数成分によって構成されている場合や機能に関与する成分の情報が少ない場合は、今回の評価基準では評価が困難であった。しかしながら、いわゆる健康食品においては、このような複数成分から構成される食品のエキスが多く存在することから、その評価方法についても引き続き議論が必要と考える。

<機能性評価モデル事業の残された課題>(3.3.)
@ 科学的根拠と機能性表示レベルをつなぐ判断基準について(3.3.1.)
@)効果の大きさ(エフェクトサイズ)について
 本モデル事業においては、食品の機能性に係る効果の大きさ(エフェクトサイズ)を十分に考慮した機能性評価を実施できなかったため、今後は、統計学的有意性とエフェクトサイズの両方を考慮した評価方法の検討が必要であると考える。
A)適正な摂取量、食品形態及び摂取期間の設定について
 消費者が機能性表示のなされた食品を適切かつ効果的に利用するための前提条件として、適正量を摂取することは必須である。このため、評価対象論文の情報の精査を実施したが、日本人を対象とした研究が少なかったこと、あるいは、成分によっては検討に資する論文が少なかったことなどから、適正摂取量や過剰摂取量についての検討を十分に行うことができなかった。同様に、食品形態による過剰摂取のリスクや吸収性の差等に関連した議論も不十分であり、これらについては今後の残された課題と考える。
 また、適正な摂取期間の表示も有効と考えられるが、食品に摂取期間を定めることの妥当性も含め、今後検討すべき課題と考える。

A 安全性を含めた課題(3.3.2.)
 本モデル事業においては、日本人における有効性を担保するための摂取量と有害事象の懸念が生じる過剰摂取量についての議論は十分にはなされていないという課題がある。さらに、成分によっては、相互作用に関する論議も必要になると考えられる。
 また、前述のとおり、食品に機能性を表示することを想定した場合、消費者がこれらの食品について正しい知識に基づき適切に利用可能であることが必須条件となる。このため、機能性の表示と同時に、消費者への普及啓発や情報提供方法についても、今後検討すべき課題と考える。さらに、消費者が医薬品との併用を試みることも想定されるため、医師などの専門家が利用しやすいデータベースや情報伝達の仕組みも必要と考える。
これらの点について、事業者が、安全性情報に関して十分に収集、解析、判断、発信できる体制を構築し、消費者と安全性情報を共有化するなどの取組も望まれる。
B 海外制度の追跡調査について(3.3.3.)
国際的な整合性を図る観点からも、諸外国等の制度について継続的に追跡調査を実施することが必要とされた。


<総括>(3.4.)
 本モデル事業においても、前述のように、食品の機能性評価及び健康強調表示に係る様々な課題が挙げられたところであり、今後健康強調表示を制度化する上で考慮すべき課題は多い。
 また、健康強調表示の可能性を検討する場合、安全性と一定の品質の確保についても重視すべきである。しかし、商品の安全性・品質に対する姿勢や関連する情報の理解度が事業者毎に異なっている現状も認められることから、今後、健康食品業界においては、健康に関する食品産業の健全な育成をするために、業界・事業者自らが消費者の立場に立って事業展開、研究開発を行うことが求められる。健康長寿社会を見据えた基礎的な研究から応用研究に至るまで、開かれた研究体制を構築するなど、今後の課題解決へ向け産官学消の関係者の理解と協力のもとでのコンセンサス作りが必要である。      
 
               --以上--

2012年5月26日
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